「婚姻の平等」のために立ち上がった日本の138社

2015年の渋谷区・世田谷区でのパートナーシップ制度の始まりは、企業にも大きなインパクトがあり、関心を持つ日系企業が急増した。2020年6月にはパワハラ指針にLGBTに関するハラスメントが盛り込まれ、厚生労働省が今年発表したレポートでは、大手企業の4割が何らかの取り組みをしている状況にまでなった。

「うちにはいない」と言い切った会社も、今は「ダイバーシティ施策の一環でLGBTに取り組んでおり、社内でカミングアウトして活躍している当事者もいます」というような状況である。

たった7年で、驚くべき変化だと思う。これは、それぞれの社内で、当事者やアライ(同盟者、支援者)の方が、勇気を出して、忍耐強く、声を上げ続けてくれた成果だ。さらっと書いた「大手企業の4割」の中にも、数々の忘れられないドラマがあったことを記しておきたい。

2015年以降、研修や福利厚生など、社内向けのLGBT施策に取り組む企業が増えてきた。一方で、LGBTは職場だけにいるわけではない。LGBTの顧客向けの取り組みも広がってきている。

生命保険の受取人に同性パートナーを指定できるようになったり、共同で住宅ローンを組めるようになったりしたというニュースは目にした方も多いだろう。今、同性カップルでも、携帯電話の家族向けの割引サービスの対象になるし、LGBTフレンドリーな結婚式場や賃貸住宅も選ぶことができる。各社が競うように取り組みを進めている状況は、2013年に活動を始めた当初からすると、本当に夢のようだ。

しかし、ビジネス分野の取り組みが進むにつれて、違和感が膨らんできた。これでは、同性同士で結婚できなくても生活が成り立つように、現状を補強しているかのようだ。企業の取り組みが、真に従業員や顧客の幸せを願うなら、真に社会の不公正の是正に向けてのものであるなら、LGBTに関する法整備にも踏み込む必要があるのではないだろうか。

こうした思いがつのり、今まで研修やコンサルティングを提供した企業に、このキャンペーンへの賛同をお願いした。企業の反応は様々で、当然、一筋縄ではいかなかった。「待っていました!」とすぐに賛同してくださった企業は少数で、ほとんどは当初、慎重な姿勢だった。

「これは『政治的』なのでは」、「国を相手にした訴訟が起きている時に、企業から口を出すようなことをしていいのか」、「人事としては賛同したいが、広報や法務からストップがかかった」、などなど。

私たちが今までお付き合いしていたのは、ほとんどが人事、ダイバーシティ部門だが、社会へのメッセージとなれば広報部門や法務部門も関わる。私たちは、1社ずつ、丁寧に説得していった。「他社の状況を見てから判断したい」という「本音」が見え隠れする企業も少なくなかった。

そんな中で、最初の時点で賛同を表明してくれた企業は、本当に勇気ある一歩を踏み出してくださったと思う。是非、労働者として、また、消費者、株主、一市民として、これらの会社を覚えておいてほしい。

そして、まだ賛同していない会社に関しては、是非、賛同するよう内外から働きかけて欲しい。大手企業が1社賛同すれば、その関係者は数万人、数十万人にもなる。企業の賛同は、世論を動かす力がある。私たちも引き続き呼びかけていきたい。

婚姻平等賛同企業・団体

村木真紀:
認定NPO法人虹色ダイバーシティ代表(理事長)。社会保険労務士。茨城県生まれ、京都大学総合人間学部卒業。日系メーカー、外資系コンサルティング会社等を経て現職。当事者としての実感とコンサルタントとしての経験を活かして、LGBTに関する調査研究や社会教育を行う。著書「虹色チェンジメーカー」(小学館新書)。
虹色ダイバーシティ法人サイト
データとアクションをまとめたサイトNIJI BRIDGE

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村木 真紀 (認定NPO法人虹色ダイバーシティ代表理事)

認定NPO法人虹色ダイバーシティ代表(理事長)。社会保険労務士。茨城県生まれ、京都大学総合人間学部卒業。日系メーカー、外資系コンサルティング会社等を経て現職。当事者としての実感とコンサルタントとしての経験を活かして、LGBTに関する調査研究や社会教育を行う。著書「虹色チェンジメーカー」(小学館新書)執筆記事一覧

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キーワード: #LGBT

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