長期ビジョンを基軸とするオムロンの経営(後)

【連載】サステナビリティ経営戦略(23)

前編では、不確実性の高いVUCAの時代において長期ビジョンの重要性が高まっている中、オムロンの2030年度に向けた長期ビジョン「Shaping the Future 2030(SF2030)」の概要をご紹介しました。後編では、その続きと混迷の時代に益々重要性が高まる長期ビジョンを基軸とする経営とその策定体制などについて解説します。(サステナビリティ経営研究家=遠藤 直見)

■ 長期ビジョン「SF2030」の策定(続き)

オムロンは、重要課題を踏まえた長期的な企業価値向上に向けて、4つの事業領域(ドメイン)を設定し、それぞれの領域で独自の社会価値の創出(例えば、インダストリアルオートメーションでは 「持続可能な社会を支えるモノづくりの高度化への貢献」)を目指そうとしています。

また、これらの価値創出に向けて新たなビジネスモデル(モノだけでなく様々なサービスを組み合わせたソリュー ションを継続的に提供するリカーリング型)への転換及びその基盤となるデータプラットフォームの構築なども進めようとしています。

オムロンの長期ビジョン策定のアプローチは進化を続けています。従来は、現在の延長で将来の姿を展望するフォアキャスティングが中心でしたが、それに加えて、将来のあるべき社会の姿や自社のポジショニングなどを想定し、そこに至る道筋を導き出すバックキャスティングアプローチも活用されています。

また、取締役会の2021年度重点テーマ(の1つ)として「次期長期ビジョンの完成と中期経営計画の決定」が設定されています。 取締役会から執行側に対し「サステナビリティ重要課題の取り組み」「ビジネスモデルの変革、イノベーションの加速 」など5つの監督する観点が示されるなど、長期ビジョン策定における取締役会の積極的な関与が窺われます。

■ 長期ビジョンは混迷の時代の経営の羅針盤

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遠藤 直見(オルタナ編集委員/サステナビリティ経営研究家)

遠藤 直見(オルタナ編集委員/サステナビリティ経営研究家)

東北大学理学部数学科卒。NECでソフトウェア開発、品質企画・推進部門を経て、CSR/サステナビリティ推進業務全般を担当。国際社会経済研究所(NECのシンクタンク系グループ企業)の主幹研究員としてサステナビリティ経営の調査・研究に従事。現在はフリーランスのサステナビリティ経営研究家として「日本企業の持続可能な経営のあるべき姿」についての調査・研究に従事。オルタナ編集委員

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キーワード: #CSR#ESG経営#SDGs

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