ホルムズ海峡危機は「LNG危機」:再エネシフトで脱却を

記事のポイント


  1. ホルムズ海峡危機によって、過去最大のLNG供給途絶が起きている
  2. LNGの中東依存度が低い日本にも大きなリスクをもたらす
  3. エネルギー安全保障のためにも再エネシフトが不可欠だ

ホルムズ海峡の緊張で、石油やナフサへの影響が注目される。しかし、より深刻なのはLNG(液化天然ガス)だ。エネルギーアナリストの大場紀章氏は「過去最大の供給途絶が起きており、日本に大きなリスクをもたらす」と警鐘を鳴らす。LNGは石油より中東依存度が低いものの、調達先の多様化だけでは構造的な脆弱性は解消されない。脱炭素とエネルギー安全保障の両立には、再エネシフトが不可欠だ。(オルタナ副編集長=長濱慎)

エネルギー安全保障においても再エネシフトが重要(写真:SOFC報告書「ホルムズ海峡の封鎖」表紙より)

◾️カタールの供給停止が生む争奪戦

LNG(液化天然ガス)火力発電は、国内電源構成の約33%(2023年度)を占める最大の電源だ。都市ガスも原料の約90%をLNGに依存する。輸入先はオーストラリア(約40%)を筆頭に、マレーシアや米国、ロシアなどが続く。

LNGの中東からの輸入は1割前後にとどまり、依存度が90%を超える石油ほど注目されていない。しかしLNGも、大きなリスクにさらされている。超低温(マイナス162℃)で液化した状態を保つ必要があり、長期在庫を持つのが難しいためだ。

ポスト石油戦略研究所の大場紀章代表は「現在はLNG史上最大の供給途絶が起きており、日本に及ぼすインパクトは計り知れない」と警鐘を鳴らす。都内での講演で、大場氏はこう指摘した。

「3月に入り、カタールのラスラファンLNG基地がドローンやミサイルによる攻撃を受け、供給停止に追い込まれた。修復には最長で5年を要する可能性があると報じられており、長期的な影響が懸念される。世界のLNG輸出の約2割を占めるカタールからの供給が滞れば、各国がスポット市場に流入し、争奪戦が激化しかねない」

過去最大、世界のLNG貿易に占める20%以上が供給途絶に(グラフ:ポスト石油戦略研究所)

◾️「買い負け」によるリスクが拡大

すでにアジアのLNGスポット価格は一時、約2倍に上昇した。電気料金の高騰などを通じ、ビジネスや暮らしへの影響が広がりつつある。大場氏は、その余波が中長期に及ぶリスクを指摘する。

「特に台湾と韓国は、日本以上にカタール産LNGへの依存度が高く、LNG火力の比率も大きい。両国は先端半導体の生産拠点でもあり、今回の危機を世界的な『AI危機』とみる声もある。発電を止めてはならないと必死になる国々に、日本が買い負けるリスクも否定できない」

大場氏は続ける。

「2011年3月の福島事故以降、日本は停止した原子力を補う形でLNG依存を強めてきた。再エネの調整電源や石炭火力の代替としても位置づけられ、LNG火力の拡大と長期契約が安定供給を支えるという構図が形成された」

しかし、その前提は揺らいでいる。

「問題はホルムズ海峡危機そのものでない。何十年にもわたって化石燃料に依存し、エネルギー自給率が低いままの日本の構造的な脆弱性にある」。環境NGO「気候ソリューション(SFOC)」のエリサ・レイス公共金融アソシエイトは、こう指摘する。

大場紀章氏と、SFOCのエリサ・レイス氏(4月1日、都内で)

◾️930億ドルの資金投入が生む悪循環

◾️日韓台連携で再エネ加速も

◾️ホルムズ海峡危機が日本に迫る決断

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S.Nagahama

長濱 慎(オルタナ副編集長)

都市ガス業界のPR誌で約10年、メイン記者として活動。2022年オルタナ編集部に。環境、エネルギー、人権、SDGsなど、取材ジャンルを広げてサステナブルな社会の実現に向けた情報発信を行う。プライベートでは日本の刑事司法に関心を持ち、冤罪事件の支援活動に取り組む。

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