記事のポイント
- サステナ経営塾22期上期にWWFジャパンの笘野哲史・自然保護室海洋水産グループオフィサーが登壇した
- サーキュラーエコノミーは、設計段階から「廃棄物が出ないこと」を前提とした経済モデルだ
- 資源循環に取り組む企業が報われるために、政府に対して「ボーナス・マルス方式」を提案する
オルタナは6月17日、サステナ経営塾22期上期第2回を開いた。第2講には世界自然保護基金(WWF)ジャパンの笘野哲史・自然保護室海洋水産グループオフィサーが登壇し、「海洋プラスチック問題とサーキュラーエコノミー」と題して講義した。講義の要旨をまとめた。

・全世界で生産されたプラスチックの3分の1がすでに自然界に流出しており、その数は年間1200万トンにのぼる。そのうち約4割は「使い捨て包装」が占める。使い捨てプラスチックは廃棄後のリサイクル率が2%と非常に低く、その多くが自然界に流出している。そのため、使い捨てプラスチックの削減を優先的に取り組むことが世界的な潮流となっている。
・こうした問題を解決するための考え方が、サーキュラーエコノミーだ。廃棄物を出さないことを前提に資源循環を目指す。「製品を長く使う」「修理する」「再利用する」など、できる限り価値を保ったまま循環させ、リサイクルは最後の手段として位置づける。近年注目される背景として、資源の採掘と加工が、温室効果ガス排出や生物多様性損失の主な要因となっていることがある。
・日本では、プラスチックの最終的な処理方法の一つとしてサーマルリサイクルが導入されている。プラスチックを燃やすことによって熱エネルギーを回収し、それを発電や熱供給などに再利用する手法だが、国際基準では有効活用とは認められていない。
・サーキュラーエコノミーの考え方を世に広めた国際的な非営利組織エレン・マッカーサー財団は、次の3つの原則を提唱している。
① 廃棄物・汚染を生まない設計(「廃棄」という概念そのものをなくす)
② 資産価値を維持し続ける(「再利用→修理→再製造→リサイクル」の優先順位で循環する)
③ 自然システムを再生する(経済活動を通して自然界の回復を促進する)。
・人口増加や新興国の経済成長に伴う資源需要の拡大と、資源を巡る地政学リスクの高まりも背景にある。苫野氏は、「ナフサショックが示すように、一次資源を海外に依存するビジネスモデルは、地政学リスクを直接的に財務リスクとして抱え込むことになる。資源を輸入に頼るのではなく、自国または自社のサプライチェーン内で可能な限り長く使い続ける方向にシフトする必要がある」と強調した。
・さらに、循環型ビジネスへ移行するメリットも明らかだという。経済効果に加えて、規制への先手対応、リスク管理の強化、ブランド価値の向上、優秀な人材の獲得といった多面的なメリットがある。
・WWFジャパンでは、「プラスチック・サーキュラー・チャレンジ2025」を通じてプラスチック汚染解決に自主的に取り組む企業と連携し、経産省や環境省への政策提言を実施した。しかし、企業が高度な資源循環に取り組むには追加コストがかかる。苫野氏は、「努力する企業が報われるように、政府が制度を整備する必要がある」と話す。
・その解決手段の1つとして、笘野氏は「ボーナス・マルス方式」を紹介した。ボーナス・マルスとは、良い成績や行動に対して税制など様々な面で優遇する一方で、悪い成績や行動に対してはディスインセンティブを課すことを指す。サーキュラーエコノミーを推進する方が有利になる構造を社会全体で作ることで、企業の高度な資源循環への投資の加速を実現する。
・WWFジャパンは「サーキュラーエコノミー戦略ガイド」を公表している。重要課題の特定から目標設定、ガバナンス構築、実行ロードマップまで、企業のサーキュラーエコノミーへの転換を段階的にサポートする内容だ。その中で、各企業の状況に合わせた実践ツールとして「10R戦略」を紹介している。Rを頭文字とする10の原則を縦軸に、自社の事業課題を横軸に置き、それぞれのクロスポイントで実践可能な取り組みを検討する。



