記事のポイント
- 信用金庫業界のシンクタンクがESG地域金融は「正念場」を迎えたと指摘した
- ESG金融を担う人材不足が深刻化していることが背景にあるという
- 専門部署だけでなく組織全体でESGに関する知見を高めることが重要だ
信用金庫業界のシンクタンクである信金中央金庫地域・中小企業研究所(東京・中央、信金中金総研)はこのほど、ESG地域金融は「正念場」を迎えているとの見方を示した。地域金融機関の取り組みはものづくり産業の支援にとどまらず、森林や海洋、観光など地域資源を生かした分野へと広がってきた。一方、ESG金融を担う人材を育成する指導者層の不足が深刻化していると指摘した。(オルタナ総研フェロー=室井孝之)
信金中金総研は6月30日、「正念場にさしかかるESG地域金融」と題したレポートを発表した。ESG地域金融を「正念場」と表現した理由は、大きく二つある。
一つ目は、ESG地域金融の対象分野が着実に拡大していることだ。環境省の「ESG地域金融の普及・促進事業」における「ESG地域課題解決支援プログラム」の2025年度採択案件を見ると、地域金融機関は脱炭素だけでなく、地域資源を生かした産業づくりへと役割を広げている。
例えば、佐賀銀行は森林資源を活用した木材サプライチェーンの構築を支援し、静岡銀行は漁港施設などを活用した海洋資源を軸とする循環型地域経済の創出に取り組む。
山陰合同銀行はサステナブルツーリズムを推進し、九州フィナンシャルグループはESG要素を組み込んだ事業性評価を展開する。さらに山口フィナンシャルグループは、コンビナートの脱炭素化と地域資源循環モデルの構築を支援する。
こうした事例は、地域金融機関が資金供給だけでなく、地域課題の解決を支える「伴走者」としての役割を強めていることを示している。
■ESGの浸透が金融機関の競争力に
一方で、レポートは人材面での課題をより深刻視した。環境省が2026年3月に公表した「ESG地域金融に関する取組状況について(2025年度アンケート調査結果)」によると、ESG金融に既に取り組んでいる金融機関は約6割に達し、多くの金融機関がESG関連資金の需要拡大を実感している。
しかし、その内訳を見ると、「今後、取り組みを拡大する予定」と回答した金融機関が減少する一方、「取り組みを開始しているが拡大は未定」とする回答が増えている。需要は伸びるものの、その勢いは鈍化するとの見方も少なくない。
その背景にあるのが、人材育成体制の脆弱さだ。調査では、体制整備上の最大の課題として「本部職員の体制は整っているが、営業店職員への浸透が不十分」という回答が目立った。
ESGやサステナブルファイナンスに関する知識やノウハウが一部の専門部署に偏在し、組織全体に十分に広がっていない実態が浮かび上がった。
信金中金総研は、金融庁が2022年に公表した「サステナブルファイナンス人材育成スキルマップ」にも触れ、ESGに関する専門知識を持つ人材を育成することが重要だと指摘した。
ESG地域金融は、制度づくりの段階から実践・定着の段階へ移行しつつある。今後は専門部署だけではなく、営業店を含めた組織全体でESGを実践できる体制を築けるかどうかが、地域金融機関の競争力を左右する重要な要素になりそうだ。


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