東南アジアEV40%時代①: 中国・ベトナム車、日本車の牙城揺るがす

記事のポイント


  1. 東南アジアでEV普及が加速し、ベトナムでは販売比率が約40%に達した
  2. 中国勢の攻勢で、日本車の牙城のタイでは日系シェアが63%に低下した
  3. EV市場は初期ブームから定着段階へ進む一方、補助金などの政策依存も

東南アジアで電気自動車(EV)の普及が急拡大している。2026年上半期(1~6月)は域内主要国のうちベトナムで、新車販売台数に占めるEVの割合が約40%に達した。タイでも約3割に上った。BYDや吉利汽車(ジーリー)など中国系メーカーがEV市場をけん引しつつ、ベトナムの地場EVメーカー・ビンファストの躍進もあり、東南アジアで圧倒的なシェアを誇った日系ブランドの牙城が揺らいでいる。(オルタナ副編集長=京正裕之)

オルタナ編集部が、東南アジア5カ国(インドネシア、マレーシア、シンガポール、タイ、ベトナム)の2026年1~6月のEV販売状況をまとめた。

EVの販売比率が最も高かったのはシンガポールで、62%に上った。ハイブリッド車(HV)とプラグインハイブリッド車(PHV)を含めた「電動車」の割合は95%に達し、ガソリン車はわずか5%となった。

ただし、同国は自動車の所有制限をかけているため、上半期の市場全体の販売台数が2万7000台余りに過ぎない。それでもEVの浸透により、シンガポール市場全体では中国系ブランドのシェアが48%となり、すでに日系(シェア22%)を逆転している。

■【ベトナム】地場EVがシェア約4割に達する

これに対し、市場に制約のない他の4カ国を見ると、ベトナムのEV比率が少なくとも39.9%に達した。前年同期から13.4ポイント上昇した。台数ベースでは72%増の約11万6000台となった。

インドネシアのモーターショーに出展されたビンファストの「VF3」

同国のEV市場をけん引しているのが、地場のEV専業メーカー・ビンファストだ。2026年上半期の販売台数は11万5916台で、ベトナムEV市場をほぼ独占している。同国の新車市場全体で2位のトヨタ自動車(3万5410台)を、トリプルスコアを超える差をつけている。

ビンファストは2017年に、不動産を中心とする地場大手財閥ビングループが立ち上げた自動車部門で、当初は欧州メーカーの技術を取り入れて内燃機関(ICE)車を製造していた。だが、21年に初のEVを投入し、22年からEV専業となった。

ビンファストが急拡大したのは、ビングループが設立したタクシー会社にビンファスト車を大量導入したことや、充電インフラの利用料を無料とするなどの戦略が奏功したためといわれる。

東南アジアの自動車市場に詳しい市場調査会社インテージの荒木裕介氏(グローバルアカウントマネジャー)は、オルタナの取材に対し「ビンファストは比較的手の届きやすい価格設定に加え、充電インフラの整備やアフターサービスへの投資を進めたことで、『EVでも普段使いに困らない』という安心感が醸成された」と話す。

上半期の売れ筋モデルの小型EV「VF 3」や小型スポーツタイプ多目的車(SUV)のEV「VF 5」は、都市部を中心とした日常利用に適したサイズや価格帯で、初めて自動車を購入する層や、二輪車から四輪車への乗り換え層との親和性も高いと指摘する。

VF3の価格は2億7075万ドン(約168万円)から、VF5は4億7210万ドンからとなっている。

さらにビンファストは海外展開を進め、タクシー会社を設立する手法により、既にインドネシアやフィリピンなどに進出したほか、今年6月にはインドでもEVタクシー事業を始めた。

インテージの荒木氏は「東南アジアのEV市場は、初期ブームを超えて本格的な定着フェーズに入りつつある」と強調する。

一方、「東南アジアでEVがICE車やHVを全面的に置き換わる段階ではないと考えている」とも指摘した。「ベトナムはビンファストの影響が極めて大きい特殊な市場で、タイやインドネシアも依然として補助金などの政策依存度が高いためだ」と語った。

■【タイ】EV定着フェーズに、補助金で急拡大
■【タイ】日系シェア63%まで低下
■【インドネシア】税制優遇策でEVシェアが16%に

■【マレーシア】国産EVが市場を着実に開

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hkyosho@alterna.co.jp

京正裕之 (オルタナ副編集長)

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キーワード: #EV#脱炭素
  1. Ryuji(Ron) TSUTSUI
    Ryuji(Ron) TSUTSUI
    2026/07/29 2:13

    私も3月にベトナムを訪問し、VinFastの経営幹部と対談し、新モデルの試乗もさせて頂きました。政府との強いパイプで給電ステーションをハノイ、ホーチミンで充実させ、両都市を繋ぐ幹線道路に延伸させて行く戦略や、EVのコストの4割近くを占める蓄電池をオプション化し、完成車としてセットでも買えるが、リースにして初期投資を抑えるなど、ユニークな施策が沢山あります。
    別の財閥「FPTグループ」の会長とも懇談しましたが、既に同社が日本で4500名ものITエンジニアを雇用し、日本の主要企業のITインフラの開発・設計・メンテナンスに貢献していることには驚きました。
    日本式教育を採用したインターナショナルスクールや、日本企業で幹部社員を目指すエリート養成校など、ベトナムの親日性に期待を寄せる一方、現地における韓国勢の積極的な投資には焦りも感じました。日本とアジア諸国は、経済合理性を超えた未来合理性に基づく協力を目指してゆくべきと感じます。

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