記事のポイント
- 有識者の考える2026年の環境危機時刻は9時39分と「極めて不安」を指した
- 一方、国内の一般生活者のアンケート結果は7時03分「かなり不安」と乖離
- 高校生世代の51%が「環境問題は解決できる」とあきらめない姿勢も
公益財団法人旭硝子財団(東京・千代田)は2026年9月8日、今年で35回目となる「環境危機時計」を発表した。世界の有識者へのアンケート調査に基づき、2026年の環境危機時刻は9時39分と、引き続き「極めて不安」な状態を指した。一方、国内の一般生活者の危機意識は7時03分(「かなり不安」)と大きな乖離が見られた。また高校生世代の51%が「環境問題は解決できる」と回答しており、大人の27%を大きく上回った。(オルタナ輪番編集長=北村佳代子)

「環境危機時計」は、旭硝子財団が1992年から継続している「地球環境問題と人類に関するアンケート」に基づく調査で、有識者が感じている地球環境の危機的状況を表す。時計の針が12時に近づくほど、危機感が高まっていることを示す。
旭硝子財団は、リオ・デ・ジャネイロでの地球サミットが開催された1992年に調査を開始した。その年の環境危機時刻は7時49分を指した。35回目となった2026年は9時39分となり、前年から見ても7分、時計の針を進めた。背景には深刻な気候変動や生物多様性の喪失に対する強い危機意識がある。

「気候変動」と「生物多様性」に対する危機意識が強かった
一方で、旭硝子財団が同日同時に発表した、国内の15歳から69歳を対象とした「2026年生活者の環境危機意識調査」結果では、環境危機時刻は7時03分(かなり不安)にとどまり、有識者との間に大きなギャップがあることが浮き彫りになった。
また、同意識調査では、「環境問題は解決できる」と答えた高校生世代が51%だったのに対し、大人世代(25~69歳)では26%と、世代間で受け止め方が大きく異なることも明らかになった。
■「人口急増で地球の許容量は限界に」と毛利衛・宇宙飛行士
日本科学未来館(東京・江東)で9月8日に開催された発表会で登壇した同館・名誉館長の毛利衛・宇宙飛行士は、未来館のシンボル「ジオコスモス」の球体スクリーンに地球の現状を映し出した。
宇宙から見た夜の地球、世界中で発生した地震がプレートのぶつかり合う境目に集中している様子、東日本大震災の津波が毎時1000キロメートルの航空機並みの速度で世界中に波及していく様子、人工衛星が観測した世界中の工場から排出された温室効果ガスの様子、地球温暖化によって平均気温が上がってきた過去と未来を球体スクリーンで示し、「急速な人口増加が、地球の許容量の限界に来ていると感じる」と危機感を募らせた。
毛利さんが日本人として初めて宇宙に飛び立った1992年の世界人口は55億人、2回目に宇宙飛行をした2000年は61億人、そして現在は83億人を超えている。
毛利さんはまた、体内の小さなウイルスが増殖して体温が2~3℃上がるインフルエンザ発症時の苦しさにたとえながら、「地球にとって人間は微小な存在。その人間が急増し、温室効果ガスの排出等によって地球の気温が上昇している」と、地球環境の現状に警鐘を鳴らした。

宇宙飛行士・毛利衛さん
■「若者の前向きな姿勢は希望」と東大・江守正多教授
続く対談セッションでは、気候科学者の東京大学未来ビジョン研究センターの江守正多教授と、環境活動家の野口絵子さんが登壇した。
野口さんは、若者世代の「環境問題は解決できる」との回答が過半を超えた結果に対し、「いろいろ思うところはある」と、次のようにコメントした。
「やはり、私たちがこれから生きていく未来なのでそう思いたい、というのがある。未来はどうにか自分たちで解決していかなければいけない。一つひとつのアクションが10年後、20年後につながるという仮説を信じて貫いて、アクションを起こしていかなければいけない。そういう認識から、このような結果になっているのではないか」
これに対し、東京大学未来ビジョン研究センターの江守正多教授は、「解決できる」が27%にとどまった大人世代を代表して、「(それに比べると)大人世代は諦めている人が多い。『まずいな』という思いと、がっかりした気持ちもある」と率直な感想を述べた。
その上で、「若い人たちが諦めずに『できる』と思っていることは大人にとっても希望だ。『諦めている場合ではない』と大人が気づかされた」と、若者の前向きな姿勢が社会を突き動かす原動力になることに期待を込めた。




