記事のポイント
- 「トランプ2.0」が始まり、反DEIの勢いが増している
- 米マクドナルドによるダイバーシティ目標の撤回などが話題になった
- 米国社会におけるDEI崩壊ドミノの可能性をどう考えるべきか
2025年1月20日に「トランプ2.0(第二次政権)」がスタートし、大統領の一挙手一投足が話題です。その一環でDEI(多様性、公平性、包括性)に関しても様々な動きが出始め、米マクドナルドが発表したダイバーシティ目標の撤回が世界中で大きな話題となりました。「反DEI」の圧力は企業だけでなく大学にも及びます。米国における「DEI崩壊ドミノ」の可能性をどう考えるべきでしょうか。(オルタナ総研所長・町井 則雄)
マクドナルドは長年にわたり包括的な職場環境の構築を目指しダイバーシティやインクルージョンの目標を掲げ、サプライチェーンにもそれを徹底してきただけに、この影響は米国の他の企業にも波及していくだろう。
米国においてこのような企業の動きは今後さらに強まる。企業だけでなくいくつかの大学もDEI関連学部を閉鎖することを発表するなど影響は社会全体に拡がりつつある。
米国内でも賛否が分かれてきた、「Woke政策」も大きく方針が転換され、DEIプログラムも削減となる。
このようなトレンドは米国内でさらに拡がっていくことになるが、これらの動きをDEIの崩壊と考えるべきだろうか。
■米国のDEIの取り組みは急進的で極端だった
良くも悪くも米国社会はトレンド的な動きが極端に振れる力学が働きやすい。時にそれはヒステリックですらある。共和党と民主党が与党を行ったり来たりするのもこれを象徴している。
その振り子は左右に揺れ続け止まることはないが、その振れ幅は時代と共に少なくなったり、ある程度の振り幅枠に収まっていったりする。
これまでの米国のDEIの取り組みは第三者的に見ても急進的で極端だった感がある。マイノリティに対する社会的配慮などは言うまでもなく重要だが、それは主に差別を排し平等を保障することであって彼らを優先すべきという話とは異なる。
■DEIに取り組む本質的な価値は変わらない
しかし、それがSNSなども含め混同され声高に主張され過ぎた。その点で米国のDEIに対する反発は、DEIそのものではなく、その流れで生み出された極端な取り組みなどの「不均衡」や「不平等」に対する不満と反動だ。それは現時点ではDEIが目指す社会的状況とは真逆に、対立を煽ってしまうという皮肉な状況となっている。
このような動きに迎合する企業やアクションが続くことになるとしても、米国社会からDEIの考え方や取り組みが無くなるわけではない。ましてやその本質的価値が棄損するわけでもない。米国社会や彼らの文化の中での収まりどころに落ち着くまでの過渡期に過ぎない。
日本は元々人権に関する関心が薄く取り組みも遅れていることもあり、これらの動きに迎合する必要はない。日本企業はこのような時流に過敏に反応することなく、DEIの取り組みをこれまで同様、冷静に粛々と進めていってほしい。