発電所の環境アセスで気候変動の対応は難しい:JERA計画で限界浮き彫りに

記事のポイント


  1. 気候変動の緩和に、化石燃料からの脱却は世界共通の課題だ
  2. しかし日本では、化石燃料を用いるLNG火力の計画が進んでいる
  3. 背景の一つに、気候変動に対応できていない環境アセスメント制度がある

国内外で相次ぐ風水害や熱波など、気候変動の影響が深刻さを増している。その原因となる温室効果ガスの削減に向けて、化石燃料から脱却することは世界共通の課題だ。しかしこれに逆行するように、日本国内ではLNG(液化天然ガス)火力発電所の新設や更新の計画が進んでいる。その背景として、脱化石に舵を取りきれないエネルギー政策に加え、環境アセスメントが気候変動に十分対応できていないという制度上の課題が浮かび上がった。(オルタナ副編集長・長濱慎)

LNG発電設備の更新を予定している、JERAの袖ヶ浦火力発電所(写真:JERAサイトより)

■2030年以降に新たなLNG設備が稼働

国内外ともに、エネルギー部門はCO2をはじめとする温室効果ガス(GHG)の主要な排出源となっている。発電部門については、脱炭素に向けて石炭や天然ガスなどの火力から再生可能エネルギーへの転換が求められる。

しかし日本では、火力発電への依存が続く。なかでもLNG火力は、石炭に比べて発電時のGHG排出量が少なく、再エネを補完する調整力として新設や既存設備の更新が計画されている。国の第7次エネルギー基本計画も「電源の脱炭素化に向けたトランジションの手段としてLNG火力の活用は必要」と明記する。

こうしたなか、環境NGOの気候ネットワークが問題提起したのが、国内最大の火力発電事業者・JERAによる「袖ケ浦火力発電所新1~3号機建設計画」だ。同計画は、既存のLNG発電設備4基を段階的に廃止し、新たに3基に置き換える。新1号機は2032年、新2号機は33年、新3号機は41年の運転開始を予定する。

燃料は引き続きLNGを使用するが、高効率ガスタービン・コンバインドサイクル(GTCC)方式を採用し、従来設備より発電量当たりのCO₂排出量を低減。さらに将来は、水素への転換やCCS(CO₂回収・貯留)による脱炭素化を目指すとしている。

これに対し気候ネットワークは8月、同計画の「環境影響評価方法書」に対する意見書を提出した。同方法書は環境アセスメントの一環として、発電所が周辺環境に与える影響についてどんな項目をどんな方法で調査・評価するのかをまとめたものだ。

■「ゼロ・オプションも選択肢に」(気候ネット)

気候ネットワークの桃井貴子・東京事務所長は、こう指摘する。

「G7では、2035年までに電力部門の完全またはおおむねの脱炭素化を目指すことが合意された。これを完了させるべき2030年代以降に、新たな化石燃料発電所が動き始めるという根本的な矛盾がある。高効率化によって従来設備より排出原単位が下がるという議論でなく、LNGを燃やすかぎりGHGが排出されること自体が問題だ」

この問題は「環境アセスメントは何を評価するものなのか」という問いにつながる。桃井氏は、こう続ける。

「現在の環境アセスメントは、大気汚染、騒音、振動など、発電所周辺への局地的な影響は比較的詳しく調査される。一方で、気候変動のように長期間にわたって世界全体に影響を及ぼす問題についての評価は極めて限定的。JERAの方法書は、日本の環境アセスメント制度が化石燃料事業の気候影響を適切に評価できていないという問題を浮き彫りにしている」

実際、発電所アセスメントの手引書である「発電所に係る環境影響評価の手引」(経済産業省)では、GHGについて「施設の稼働に伴い発生する二酸化炭素の排出量の把握」と記すにとどまっている。

気候ネットワークは、何十年にもわたる発電所の運転期間全体の累計排出量や、LNGの原料となる天然ガスの採掘から液化、輸送も含むライフサイクルのGHG排出量も含めるべきだと強調する。

天然ガスの主成分であるメタンも強力な温室効果ガスだ。採掘時のメタン漏出や液化、輸送などを考慮すると、発電時だけを対象にした場合よりGHG排出量は増える。

気候ネットワークは、再エネや蓄電池などの代替案や、事業を実施しない「ゼロオプション」の検討も義務付けるべきだと指摘する。そうでなければ、「環境アセスメントは、事業を実施することを前提とした局地的な影響の確認に終わってしまう」(桃井氏)と、危惧を募らせる。

■「ライフサイクル排出量は評価せず」(JERA)

では、事業者側はどう考えているのか。JERAに尋ねた。

JERAは施設の稼働に伴う年間排出量と、発電電力量当たりの排出量を示す一方で「設備の運転期間全体を通じた累積CO₂排出量や、LNGの採掘・液化・輸送等を含むライフサイクルGHG排出量について評価する予定はない」(報道部)と回答した。

一方で、JERAは2035年度までに国内事業のCO₂排出量を2013年度比60%以上削減する目標を掲げる。この目標は、日本政府が1.5℃目標と整合的とする2035年NDC(国が決定する貢献=削減目標)水準と整合しており、袖ヶ浦の計画もその達成に向けた一環と説明する。

ゼロオプションについては「再エネの導入を自然条件に左右されず発電できる火力で支えることが今回の事業目的であるため、事業を実施しないという代替案を含めた検討は現実的ではない」(報道部)と回答した。

気候ネットワークとJERAの認識の違いは「LNG火力に賛成か、反対か」だけではない。環境アセスメント制度の役割そのものに対するとらえ方が異なっている。

JERAによる袖ヶ浦火力発電所・新1号機の脱炭素化ロードマップ。将来的には化石燃料由来の「ブルー水素」やCCSの導入も視野に入れる

■「気候変動の影響を評価する制度ではない」(経産省)

■海外では気候変動を組み込む事例も

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S.Nagahama

長濱 慎(オルタナ副編集長)

都市ガス業界のPR誌で約10年、メイン記者として活動。2022年オルタナ編集部に。環境、エネルギー、人権、SDGsなど、取材ジャンルを広げてサステナブルな社会の実現に向けた情報発信を行う。プライベートでは日本の刑事司法に関心を持ち、冤罪事件の支援活動に取り組む。

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キーワード: #脱炭素

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