東京郊外に巨大データセンター、昭島市民が全国初の差し止め提訴へ

記事のポイント


  1. 東京・昭島の巨大データセンター(DC)開発を巡り、住民らが事業主を提訴へ
  2. 生存権・人格権に基づき、複合施設の火災リスクなどの危険を問う考え
  3. 都市部のDC開発は排熱やCO2排出を伴う「新たな公害」として問題を提起

東京都昭島市で物流施設とデータセンター(DC)を整備する巨大複合開発を巡り、市民団体は10月20日、開発事業者に建設差し止めを求める民事訴訟を起こす方針を発表した。重油の備蓄やリチウムイオン電池の大量導入に伴う火災リスク、排熱などによる健康・環境への影響を懸念し、生存権・人格権に基づき年内の提訴を目指す。データセンターの事業者に直接差し止めを求める民事訴訟は全国初になるという。(オルタナ副編集長=京正裕之)

会見を開いて巨大物流センターとデータセンター開発の差し止め訴訟を起こすと発表した寺西俊一氏(右から3人目)ら

■「最後の手段として司法の場に」

「最後の抵抗手段として訴訟に踏み切るしかない。司法の場にこの問題を持ち出して、司法の場で我々の声を伝えたい」

10月20日に立川市役所の記者クラブで開いた会見で、「GLP昭島開発差止め訴訟の会(ストップGLP!訴訟の会)」共同代表の寺西俊一氏(一橋大学名誉教授)が語気を強めた。環境経済学が専門で公害研究にも携わってきた寺西氏は「(データセンター開発が)新たな公害をもたらす懸念を持っている」と述べた。

訴訟の対象となる「GLP昭島プロジェクト」は2022年に計画が公表された。物流不動産の投資・開発などを手がける外資系の日本GLPが、昭島駅北側にあったゴルフ場「昭和の森ゴルフコース」跡地など約58.8ヘクタールに、物流施設3棟とデータセンター8棟を整備する計画だ。26年6月には物流施設の第1棟が着工した。

昭島市の面積は1,734ヘクタールのため、開発区域は市域の約3.4%を占める大型開発となる。

GLP昭島プロジェクトの開発地となった「昭和の森ゴルフコース」の上空写真。上から2022年3月時点、24年4月時点、26年2月時点。ゴルフ場の芝地や樹木などを含む計画地内の緑地は、開発前の約52.7ヘクタールから、完成後には約12.1ヘクタールに減る見通しだ。新設緑地を含めても約77%減る計算となる。(Google Eatthより)

弁護団の田所良平弁護士は会見で「データセンター8棟と物流センター3棟の建築をしてはならないということを命じる判決」を求めると説明した。年内に東京地裁立川支部に、日本GLPを主たる被告として提訴する。

田所弁護士は差し止め請求の法的根拠について、生命、身体・健康に係る生存権・人格権のほか、平穏で安全に生活する権利、浄水や自然環境の恵みを享受する権利なども主張する方針を示した。

権利を侵害する具体的な危険として、▽大量のリチウムイオン電池の導入や重油の大量備蓄を伴うデータセンターの火災・爆発リスク▽排熱による健康被害▽樹木の大量伐採による緑地喪失▽水の大量使用▽身近な自然破壊▽物流センター稼働による交通事故や騒音、渋滞――などを挙げた。

日本GLPの広報担当者は10月20日、訴訟の会の差し止め訴訟の方針について、「現時点ではまだ、訴状を受け取っておらず正確な内容がわからないため、コメントは差し控える」と述べた。

■調停打ち切り、公開の法廷で検証へ

開発地の周辺には住宅や学校、福祉施設などがあり、住民らは計画発表当初から、交通量の増加や騒音、緑地の喪失などの懸念を表明してきた。物流センターの関連車両でいえば、1日5800台、往復の走行では1万1600台を想定する。こうした中で、複数の市民団体が立ち上がり、近隣自治体などとも連携し、日本GLPに対して要望書などを提出してきた。

だが、住民側は十分な説明が得られなかったとして、25年2月に東京都公害審査会に、事業者との紛争解決に向けた調停を申請した。寺西氏と二ノ宮リムさち氏(立教大学環境学部教授)が共同代表を務める「GLP昭島公害紛争調停団(くじら調停団)」には、最終的に申請人として住民607人が参加。1年半で計6回の調停が開かれたが、合意に至らず、26年8月17日に打ち切られた。

住民らは10月18日に訴訟の会を結成した。寺西氏は、調停が非公開だったのに対し、「法廷の公開された場で計画の問題点や懸念を訴えたい」と説明した。

「GLP昭島公害紛争調停団(くじら調停団)」には、最終的に申請人として住民607人が参加した

■データセンター開発を「新たな公害」として捉える

GLP昭島プロジェクトを巡る懸念は多岐にわたる。10月20日の会見後、二ノ宮教授はデータセンター開発を「新たな公害」として捉えられると指摘した。排熱や大量のCO2排出、生物多様性への影響など、従来の典型7公害(大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、騒音、振動、地盤沈下、悪臭)の枠組みでは捉えきれない問題が生じる懸念があるためだという。

データセンター特有の影響に対応する規制が十分に整っていないことに加え、施設の秘匿性が高く、事業構造も複雑なため、住民から事業の実態や安全対策が見えにくいことも、不安を強めていると指摘した。

■CO2排出予測は市全体の約4.6倍
■排熱と生態系、予測の根拠を問う
■重油の備蓄量が分からず、火災への不安
■各地で問われるデータセンターの立地

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hkyosho@alterna.co.jp

京正裕之 (オルタナ副編集長)

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キーワード: #データセンター

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