■雑誌オルタナ86号 alternative eyes(59)
オルタナ86号をお届けします。今号の第一特集は「アウトサイドイン 先進・先鋭77事例」です。アウトサイドインはSDGsのビジネス指南書「SDGコンパス」に記述があります。
同書では「世界的な視点から、何が必要かについて外部から検討し、それに基づいて目標を設定することにより、企業は現状の達成度と求められる達成度のギャップを埋めていくこと」と定義しました。私たちはSDGsアウトサイドインを応用し、「社会課題の解決を起点にしたビジネス創出」と解釈し、推奨してきました。
21世紀以降の世界では、富の偏在が加速し、貧富の格差が拡大したとともに、気候変動、生物多様性、水、人権、ジェンダーギャップなどの課題が解決されないままです。本号で紹介した77のビジネスが、これら深刻な社会課題を解決していくことを願ってやみません。
アウトサイドインは、結局のところ、オーストリアの経済学者ヨーゼフ・シュンペーター(1883-1950)が定義した「イノベーション(革新)」と軌を一にするものです。シュンペーターはイノベーションを単なる「技術革新」ではなく、「新結合」(ニュー・コンビネーション)と定義しました。
シュンペーターは著書『経済発展の理論』(1912)で、新結合が起きるパターンを次の5つに分類しました。
➊プロダクトイノベーション 新技術や新製品の開発から生まれるもので、「プロダクトアウト」の色彩が濃いです。スマートフォンや自動運転などがそれに当たります。
➋プロセスイノベーション 販路や販売モデルのイノベーションです。アマゾンなどのイーコマースや米eBay、ヤフオクなどのオークションなども含まれます。
➌マーケットイノベーション いわゆる「マーケットイン」で、このベクトルを市場から社会に伸ばしたものが「アウトサイドイン」に変わっていくのです。
➍サプライチェーンイノベーション 新しい原料や資源の供給源の獲得を指します。2000年代のシェールオイルやレアメタル採掘の多角化などがそれに当たります。
➎オーガニゼーションイノベーション これもシュンペーターの時代にはなかったことですが、非営利組織によるビジネス、「ティール組織」など近年は多くのビジネス組織形態が生まれました。
以上のように考えると、アウトサイドインは、「マーケットイノベーション」の範囲と目的を拡大化した「ソーシャルイノベーション」の一つと考えられます。いわば、社会課題と製品・サービスの「新結合」です。
ソーシャルイノベーションが今後発展する条件は、セクターを超えた協働(クロスセクター・コラボレーション)の活性化と、持続可能な資金循環メカニズムの構築です。
米スタンフォード大学のジェームズ・ファウルス教授らは、現代の複雑な社会課題は単一の組織では解決できず、政府、企業、非営利組織が互いの強みを統合するパートナーシップが不可欠であると指摘しました。
さらには、インパクト投資などの多層的なファイナンス環境や、市民が主体的に参加できるデジタル技術の活用が、革新的なアイデアを社会に定着・拡大させるための必須条件です。本来であれば、日本は人口減少や高齢化など課題先進国として、世界をリードしていける位置にあります。
日本が社会課題解決先進国になれるか、他国の後塵を拝するか。いままさに岐路にあると言えます。



