サーキュラーエコノミー(循環経済)促進の大きな足掛かりになりそうなプロジェクトですが、成功の要因をまとめてみましょう。まず、プラスチック・バンクのカッツ代表が、ごみを資源としてとらえ直し、環境に持続可能性をもたらそうとした発想の転換です。
二つめはSDGsのゴール14「海洋保全」をゴール1「貧困をなくす」と組み合わせ、相乗効果を狙ったことです。いいことをしましょうでは限界があります。貧困層に経済的なインセンティブを与えたことでプロジェクトは動き出したといえます。
三つめは連携の重要性です。IBMの支援でブロックチェーンという最新のIT技術を導入したことで信頼性が高まりました。プラスチック・バンクという社会性の高い企業とIBMという大手企業、それぞれ立場も文化も違いますが、増え続ける海洋プラスチックごみという深刻な問題に何とか対処したいという強い思いが、組織の壁を乗り越えさせたのでしょう。
IBMは、プラスチック・バンクへの製品・サービス提供を通して利益がもたらされるだけではありません。この事例をフラッグシップに、「ブロックチェーン・フォー・ソーシャルグッズ」イニシアチブを立ち上げ社会的インパクトとマーケットの拡大を狙っています。
消費財大手のヘンケルは回収されたプラシチックごみを再生原料として購入しているし、シェルはプラスチック・ニュートラル計画に投資しています。
真のSDGs事業開発に向け、企業のみなさんにも是非、参考にしていただきたい事例です。
(完)