原田勝広の視点焦点:ロボットは家庭から介護へ

この日のテーマは脳トレーニング。□んぶん□、し□か□せ□とディスプレーにあり、□に同じ文字を入れてもらうという作業でした。普段スマホを使っておらず大丈夫か、耳の遠い人に声が届くかと心配しましたが、職員の協力もあり、うまくいったようです。特養側でも認知症などに対する未病対策として使いたいと前向きでした。

ハタプロの伊澤諒太社長(32)は「ロボットに話しかけるのは不慣れな高齢者もいたが、楽しそうに接してくれた。ロボットの返事のタイミングがずれたり、個別対話を前提にしているので集団の中での対話にやや問題があった」と話しています。

伊澤社長は、AIロボットに大きな可能性を感じており、今後は会話の中で問診し「よく眠れたか「疲れてないか」をするほか、体温、体重、傷、ふらつきなどの健康を記録した後、それを分析し、報告する。それを通して病気を発見すること、改善指導など診療を行うことが目標だということです。

具体的にはロボットにカメラを付け、次世代通信5Gを活用して、クラウドの情報の活用を活発化。さらにIoTサイネージディスプレイと連携して、発話を促すカウンセリングなど会話機能をデイサービス利用者向けに配信する考えです。将来的には、未病の早期発見、認知機能の維持、改善と健康寿命の延伸など治療につながる脳トレ、体操、オシャベリなどのコンテンツを充実させたいと意欲的です。

介護施設などでは、ズックが司会役をしてグループで一緒に会話を楽しんだり、社会参加を楽しめるような手法も考えています。また、ロボットの活動で、他の従業員の負担を減らすことができるかもしれません。

伊澤さんはITを学んだあと、技術を生かして社会に役立つことをしたいと23歳で起業、AIと通信をつなげることを目標にロボットの開発に取り組んできました。

2019年10月には湘南ヘルスイノベーションパークに入居し、次世代医療機器の開発やデジタルヘルス事業の共創を行う予定です。人型ロボットの、かつてのホンダのアシモ、ソフトバンクのペッパー、ソニーの犬型ロボットaiboなどこの世界のライバルは多いですが、ズックは中間の小型で軽量なAIです。それだけに汎用性は高く、期待できそうです。(完)

harada_katsuhiro

原田 勝広(オルタナ論説委員)

日本経済新聞記者・編集委員として活躍。大企業の不正をスクープし、企業の社会的責任の重要性を訴えたことで日本新聞協会賞を受賞。サンパウロ特派員、ニューヨーク駐在を経て明治学院大学教授に就任。専門は国連、 ESG・SDGs論。NPO・NGO論。現在、湘南医療大学で教鞭をとる。著書は『国連機関でグローバルに生きる』など多数。執筆記事一覧

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