原田勝広の視点焦点:SDGインパクト渋澤氏に聞く

――SDGインパクトは具体的にどんなスタンダード、基準ですか?

スタンダードは、企業の場合だと4つあります。Strategy(戦略)、Management Approach、透明性、ガバナンスです。ボックスチェック的なものではまったくなく、例えばStrategyでは、ある事業を行う場合、「なぜこれをやるのか」が問題です。何をやるかではなく、また、いかにやるかでもなく、そもそもなぜやるのかの企業の戦略が問われるのです。


企業は経営戦略のキーワードとして今、パーパスという言葉を使い始めています。なんのために会社が存在するのかということですが、これに似ています。ハウツーよりもっと俯瞰した概念です。 企業理念にSDGsをいかに取り込むか、SDGインパクトはそのためのひとつの手段になるのです。単にSDGsをやっていますよ、と見せるということではなく、企業価値につなげようとしている。そういう意味ではすごく厳しいが、非常に意味のあるものだと思います。企業理念に合致できれば4つの基準に沿って①SDGsを戦略として取り入れ事業を企画②それに沿って事業を実施③透明性確保と説明責任を果たす④組織としてSDGsにコミットしていくーという包括的なプロセスが評価されることになるわけです。

――対象は企業そのものですか、企業が実施する事業ですか?

企業です。あとは債券とPE。

――基準を策定するのがUNDPで、認証は第三者に任せるわけですか?

第三者認証は専門機関ですね。2020年2月の時点では、UNDPは2020年末には始めたいとしていましたが、もう少し時間がかかるようです。今年2月頃にはSDGインパクトの企業の最終案が出て、債券、PEと合わせて3つそろえば認証機関に対する訓練も始められます。認証機関の数は多すぎて乱立するのもまずいし、かといって少なくて大手ばかりでは敷居が高く、企業側は腰が引けてしまうのも課題になります。いずれにしろ、6月からデューク大学などでの訓練が開始されれば、SDGインパクトはパイロット的に早ければ今年中にはスタートするでしょう。

――日本企業にとっては大変な変革が求められるわけですね。

大変かもしれないが、これまで表面的な化粧で済んでいたものが、運動してちゃんと新賃代謝を高め、本当に健康な体をつくろうという考え方で、評価できます。利益重視のミルトン・フリードマン的な考え方は、トランプ政権も支持していましたが、今や、ステークホルダー資本主義が謳われるようになっています。米国でさえがそれだけ変わっているわけです。時代の流れですね。

日本企業の取るべき対応について

harada_katsuhiro

原田 勝広(オルタナ論説委員)

日本経済新聞記者・編集委員として活躍。大企業の不正をスクープし、企業の社会的責任の重要性を訴えたことで日本新聞協会賞を受賞。サンパウロ特派員、ニューヨーク駐在を経て明治学院大学教授に就任。専門は国連、 ESG・SDGs論。NPO・NGO論。現在、湘南医療大学で教鞭をとる。著書は『国連機関でグローバルに生きる』など多数。執筆記事一覧

執筆記事一覧
キーワード:

お気に入り登録するにはログインが必要です

ログインすると「マイページ」機能がご利用できます。気になった記事を「お気に入り」登録できます。
Loading..