記事のポイント
- 社会課題の解決に宇宙技術を活用するスタートアップが増えている
- 衛星データを活用して空き家や水道管の漏水リスクを探す事業は軌道に乗る
- こうした企業は宇宙航空研究開発機構(JAXA)からの支援も受けている
社会課題の解決に宇宙技術を活用する新興企業が増えている。衛星データをAIで解析し、空き家や太陽光発電用地を探すほか、水道管の漏水の端緒を発見するなど街づくりやインフラ維持を行う。宇宙航空研究開発機構(JAXA)もこうした企業を支援する。 (オルタナ副編集長・京正裕之)

7月28日に熊本県でM7.1の地震が発生してから3日後、衛星データから空き地・空き家などを探すスタートアップ企業WHERE(ウェア、東京・文京)が、復旧作業に当たる企業・自治体向けにサービスを無償提供した。
同社のサービスは、衛星データをAIで解析し、空き地や古い屋根の建物などを上空から抽出できるプットフォームだ。登記情報や土地の境界、ハザードマップなども紐づけられている。取引につながりそうな不動産を探す企業向けツールだが、災害時の復旧・復興にも活用できる。
西村仁COOは「災害現場では、損壊した建物の地権者を早急に把握でき、迅速な復旧・復興作業を支援できる。われわれのツールを無償で使ってもらうことは自然な話だった」と話す。
従来、被災現場では不動産・建設会社の担当者が、損壊した家屋などを撮影して社内へ共有した後に、地番や登記簿を取得した上で地権者・所有者が誰なのかを確認していた。それをWHEREはスマートフォン上で一括して進めることができる。
衛星データは地域によって更新頻度が異なり、被害をリアルタイムで把握するものではないが、復旧・復興に向けた意思決定を早められる。

■7300万件の不動産情報をデータベース化
2022年設立のWHEREは、JAXAが認定する「JAXAスタートアップ」の一社だ。JAXAの職員が取締役の一角を担い、併せて技術面での支援も受けている。
創業者の阿久津岳生CEOは約20年間、不動産業に携わった。その後、JAXA宇宙科学研究所の総合研究大学院大学で研究に従事する中、月のクレーターの変化をAIで解析する技術を知り、「地球で活用すれば土地を探せる」と着想した。
WHEREが向き合っているのは、人口減少や高齢化で空き家や遊休地が増える一方、それを必要とする企業や人に情報が届いていないという社会課題だ。今年2月には、衛星データから抽出した田畑や古い屋根、空き地、駐車場など約7300万件の不動産情報をデータベース化した。
利用者がエリアや物件の条件を指定すると、候補物件数を最短1秒で表示する。衛星データから候補地を絞り込めるため、街を歩いたり車で回ったりして探す手間を省ける。
■「ディールテック」から街づくりへ
■水道管の漏水空から端緒探す
■予算効率化しインフラ維持を
■宇宙技術の社会実装に奔走

