3頭のゾウとSDGsの話

世界気象機関(WMO)の温室効果ガス世界資料センターは今年11月、二酸化炭素(CO2)の世界平均濃度は2019年、過去最高となる410・5ppmに達したと発表しました。

産業革命前のCO2濃度は350ppmでした。気候変動問題で世界的に活動を広げる「350.org」の「350」は、ここから来ています。410.5ppmは「過去80万年で最高レベル」と言われています。

南極でも今夏、気温20℃を記録し、いよいよ海水面が本格的に上昇する日も近いかもしれません。ロンドンではテムズ川が氾濫すると、川沿いにある首相官邸やウェストミンスター宮殿(英国議会)が水没してしまうため、防波堤設置の議論が始まりました。

「3頭目のゾウ」は「ナッジ」です。2017年、シカゴ大学のリチャード・セイラー教授が行動経済学でノーベル経済学賞を受賞したことがきっかけで大きな注目を集めました。

人々の行動変容を促すには、法的規制や罰則、あるいは経済的インセンティブなどを使うのではなく、母ゾウが子ゾウを鼻でやさしく押し動かすように、人々の意識を変えていく考え方です。

気候変動、人権、ジェンダー、LGBT、障がい者雇用ーー。これらの社会的課題はすべて、企業人や生活者の「行動変容」がないと解決できません。SDGsの17ゴールについて、一人ひとりが行動を変えることが、今まで以上に大切になってきたのです。

今回ご紹介した「3頭のゾウ」は、これからの企業行動や、生活習慣に大きく関わってきます。これまでの「当たり前」が、今後は通用しなくなることが増えるでしょう。

海洋プラスチックごみ問題もその一つです。オルタナ本誌54号では「ストローは序章」という第一特集を組みましたが、脱プラの動きはさらに加速していきます。プラスチックは私たちの生活を便利にしてくれましたが、今までと同様の使い方で良いのかが、問われているのです。

森 摂(オルタナ編集長)

森 摂(オルタナ編集長)

株式会社オルタナ代表取締役社長・「オルタナ」編集長 武蔵野大学大学院環境学研究科客員教授。大阪星光学院高校、東京外国語大学スペイン語学科を卒業後、日本経済新聞社入社。編集局流通経済部などを経て 1998年-2001年ロサンゼルス支局長。2006年9月、株式会社オルタナを設立、現在に至る。主な著書に『未来に選ばれる会社-CSRから始まるソーシャル・ブランディング』(学芸出版社、2015年)、『ブランドのDNA』(日経ビジネス、片平秀貴・元東京大学教授と共著、2005年)など。環境省「グッドライフアワード」実行委員、環境省「地域循環共生圏づくりプラットフォーム有識者会議」委員、一般社団法人CSR経営者フォーラム代表理事、日本自動車会議「クルマ・社会・パートナーシップ大賞」選考委員ほか。

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キーワード: #SDGs

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