サステナ経営塾2026:[資源循環と新事業]トヨタ自動車・中村慶至氏講義

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記事のポイント


  1. トヨタは新規事業創出を仕組み化し、年間約300件の新事業アイデアが集まる
  2. アップサイクル製品開発では素材やコストなど4つの壁に直面した
  3. 「環境に良い」だけでは売れず、デザイン・機能の強化やコラボが重要だ

オルタナは9月16日、サステナ経営塾22期上期第5回を開いた。第2講にはトヨタ自動車新事業企画部の中村慶至・主幹が登壇し、「モッタイナイをもっといいへ、トヨタが取り組むモッタイナイ素材アップサイクルの挑戦」をテーマに講演した。中村氏は、アップサイクルを継続的な事業として成立させることは容易ではなく、素材やコストなど4つの壁に直面したと語った。また「環境に良い」だけでは売れず、デザインや機能の強化や他社とのコラボレーションが重要になると語った。

トヨタ自動車・中村慶至氏

・中村氏は現在、アップサイクルと地方創生の2軸で新事業に取り組んでいる。いずれも社会課題との関係が深い一方で、事業として継続させることは容易ではないという。そのため、売上・収益面だけでなく、会社として取り組む意義を説明することが欠かせないとした。

・トヨタは1989年に事業開発部を立ち上げ、マリン事業やアグリバイオ、リハビリ支援など、自動車以外にも事業領域を広げてきた。2017年からは新規事業を創出する仕組み「BE creation」を展開している。

・新事業の公募制度「B-pro」には毎年約300件の応募があり、書類・面談審査を通過するのは約20~30件。そこから段階的に検証を重ね、約1年後の最終審査を通過するのは3~4件程度だ。顧客課題の仮説などを検証しながら、事業化の可能性を見極めていくと説明した。

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・その中で撤退した事業についても、その経緯や顧客へのアプローチ、撤退理由などを資料にまとめ、社内にノウハウとして蓄積しているという。中村氏は「失敗事例をためておくことも、大きく見れば成功だ」という安心して挑戦できる風土が社内にあるとし、「企業の中で新規事業を育てていくには重要なエッセンスだと思う」と語った。

・中村氏自身も、愛知県豊田市の稲武地域に2年間通い、地域課題を起点とした事業化を模索した。最終的には当初想定した形での事業化には至らなかったが、その試行錯誤の中で、地域の自動車シート縫製メーカーによる合成皮革端材のアップサイクルと出会った。これが、現在取り組む「TOYOTA UPCYCLE」のきっかけとなった。

・自動車の製造工程では、本革の端材、エアバッグのナイロン生地、シートベルトなど、多様な未利用材が発生する。燃料電池車「MIRAI」の水素タンク製造でも、自動車部品には使えない樹脂の「パージ材」が生じる。中村氏は、こうした未利用素材は「氷山の一角」だと説明した。

・トヨタでは、こうした未利用素材をバッグやビジネスグッズ、アパレル、インテリアなどアップサイクルしている。アップサイクルは、本来ならば廃棄される素材の特性や形状を生かし、ひと手間や新たな視点を加えることで、価値を高めて社会に戻していく取り組みだ。

・一方、中村氏は事業化する中で、「素材」「コスト」「顧客価値」「事業継続」の4つの壁にぶつかったと語った。未利用素材は品質や量、形状、発生時期が安定しない上、選別や保管、前処理などに手間がかかり、製造コストも高くなりやすい。

・さらに、「エコだから」「環境に良いから」「ストーリーがあるから」という理由だけで、アップサイクル商品は売れないと強調した。その上で、一つの商品として選ばれるだけの機能性やデザイン性が必要だと指摘した。また、コラボレーションで他社の力を借りる方法もあるとした。

・トヨタの場合は、アパレル企業アーバンリサーチや、サッカーJ1の名古屋グランパスと商品開発を進めてきた。「おしゃれだから」「スポーツが好きだから」という理由で商品が選ばれ、その後にアップサイクル製品だと知ってもらうのでも良いという。中村氏は「入り口でサステナビリティにこだわりすぎると失敗するケースが多かったので」と振り返った。

・最後に中村氏は「一社だけではなかなか循環はつくれない」と強調した上で、異業種企業やブランドが強みを持ち寄る「総力戦でやらないといけない」と述べた。トヨタが自社の未利用材を活用するだけでなく、これまでに培った知見や企業とのネットワークを生かし、他社のアップサイクル事業化にも貢献していきたいと話した。「循環をあきらめない」ことを一部の担当者だけの取り組みにせず、企業や業界を超えた文化にしていくことを目指している。

susbuin

サステナ経営塾

株式会社オルタナは2011年にサステナビリティ・CSRを学ぶ「CSR部員塾」を発足しました。その後、「サステナビリティ部員塾」に改称し、2023年度から「サステナ経営塾」として新たにスタートします。2011年以来、これまで延べ約700社900人の方に受講していただきました。上期はサステナビリティ/ESG初任者向けに基本的な知識を伝授します。下期はサステナビリティ/ESG実務担当者として必要な実践的知識やノウハウを伝授します。サステナ経営塾公式HPはこちら

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キーワード: #サステナ経営塾

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