「猛暑」を「気候変動」と関連づけた報道は1.9%: 猛暑は食品ロスも増やす

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記事のポイント


  1. 連日、「暑さ」の事実は伝えられるが、暑さの原因についての報道は少ない
  2. 猛暑は食品ロスを増やし、食品ロスもまた猛暑を招く要因となっている
  3. 食品ロスを気候変動と結び付けた報道もほとんどない

連日、「暑さ」の事実は伝えられるが、暑さの原因についての報道は少ない。猛暑は食品ロスを増やし、食品ロスもまた猛暑を招く要因となっている。食品ロスを気候変動と結び付けた報道もほとんどないのが実態だ。(オルタナ客員論説委員=井出留美)

食品ロスと猛暑を結び付けた報道はほとんどない

気象庁によれば、2026年7月中旬・下旬の西日本の平均気温は、統計を開始した1946年以降、最も高くなった。

最高気温40℃以上の「酷暑日」は、2026年8月3日時点で延べ34地点にのぼった。過去最多だった2025年の30地点を上回り、比較可能な2010年以降で最も多くなっている。東海地方では国内で初めて5日連続の酷暑日を記録し、九州では観測史上、初めての酷暑日となった。

連日、「暑さ」の事実は伝えられているが、なぜこの暑さが起きているのかはどれだけ報じられているだろうか。実は、この猛暑は食品ロスを増やしている。そして食品ロスが猛暑を招いている。

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■「猛暑」報道のうち「気候変動」に触れたのは1.9%

日本最大のビジネスデータベースサービス「G-Search」で、2026年8月1日から20日までの記事を検索した。

「猛暑」を報じた記事は3065件。このうち「猛暑」を「気候変動」と関連づけて報じたものは58件だった。全体の1.9%である。つまり、猛暑報道100件のうち、気候変動に触れたものは2件に満たない。

同じ検索を、2023年から毎年続けている。期間はいずれも8月1日から20日まで、検索条件も同じである。

「猛暑」を報じた記事は、2023年が2606件、2024年が2686件、2025年が3330件、そして2026年が3065件。この4年で増えている。

だが、そのうち「気候変動」に触れた記事の割合は、2023年の4.5%から、3.4%、2.8%、そして2026年の1.9%へと、年を追うごとに下がり続けている。

各年8月1日から20日のデータ、G-Searchで検索、筆者が制作したグラフをもとにAIで編集

「熱中症に気をつけましょう」とは言う。だが、なぜこの暑さが起きているのか、どうすれば緩和できるのかには触れない。

「酷暑日」という言葉は、2026年4月17日、気象庁の予報用語となった。新しい用語を設けなければならないほど、40度という気温が常態化した。だが、なぜ常態化したのかは報じられない。

■気象庁は「地球温暖化等の寄与」と明記

気象庁は2026年8月3日、「2026年7月中旬~下旬の顕著な高温と今後の見通しについて」を公表している。

気象庁は、高温の要因として、上空の偏西風が平年より北側を流れたこと、西日本付近で上層のチベット高気圧が強まったこと、太平洋高気圧の縁辺から暖かい空気が流れ込んだことを挙げている。そして「地球温暖化等の寄与」も明記している。だが、暑さを報じるときには地球温暖化のことまで言及されない。

■食品ロスの報道も「気候変動」と共に報じられない

筆者が取材してきた「食品ロス」は、「気候変動」と関連が深い。燃やしたり埋め立てたりすることで温室効果ガスを排出するからだ。

食品ロス削減に取り組む国際連合Champions12.3の会議でも、2023年ごろから「食品ロスと気候変動は同時に議論すべき」と言われてきた。だが報道では、「食品ロス」と「気候変動」が結びつけて報じられることは、ほとんどない。

国連環境計画(UNEP)や国連世界食糧計画(WFP)によれば、食べられずに捨てられた食料に由来する温室効果ガスは、世界全体の排出量の8〜10%を占める。航空部門の排出量の、およそ5倍にあたる量である。

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)によれば、低排出シナリオを実現するためには、食品ロスや食料廃棄を削減する必要がある。

国連食糧農業機関(FAO)は、食品ロスが一つの国だとしたら、中国、アメリカに次ぐ世界第3位の温室効果ガス排出国になると試算している。

同じG-Searchで、「食品ロス」についても数えてみた。2026年8月1日から20日までに「食品ロス」を報じた記事は101件。このうち「気候変動」と関連づけたものは、2件だった。

4年分を合わせると「食品ロス」を報じた記事は491件、そのうち「気候変動」に触れたのは16件。3%あまりにすぎない。年ごとの件数は2〜6件で動いており、母数も小さいため増減に意味を読み取れないが、4年を通して3%前後という数字は変わらなかった。

各年8月1日から20日、G-Searchで検索、グラフは筆者が作成したものをもとにAIで編集

「食品ロス」を報じた記事そのものも、2023年の145件から2026年の101件へと、4年間で3割減っている。

同じ期間、「猛暑」の報道は2606件から3065件へと増えている。猛暑の報道が増える一方で、その一因である食品ロスの報道は減っている。

「猛暑」も「食品ロス」も、「気候変動」と結びつけて報じられることがない。

■食品ロス削減は気候変動対策の「緊急ブレーキ」

では、食品ロスを減らすことは、気候変動対策としてどれくらい有効なのだろうか。

米国の環境NGOプロジェクト・ドローダウン(Project Drawdown)は、世界の気候変動対策を科学的に評価している。かつて、この団体が100の解決策に順位をつけていた際、食品ロス削減は常に上位に位置していた。筆者も過去の記事で「100位中3位」と紹介してきた。

その後、同団体は評価の枠組みを「ドローダウン・エクスプローラー」に刷新し、順位ではなく区分で示すようになった。食品ロス・食品廃棄の削減は、最上位区分である「Highly Recommended(強く推奨)」に分類されている。

さらに注目されるのが、新たに加わった「効果の速さ」という指標である。食品ロス削減は「Emergency Brake(緊急ブレーキ)」に区分されている。実行してから大気に効果が現れるまでが速い解決策、という意味だ。効果が速く出るからこそ優先度が高いと位置づけられている。

食品ロスを1トン減らせば、二酸化炭素換算で2.82トンの排出が減る(100年基準の中央値)。二酸化炭素換算1トンの削減につき、194米ドル(約31000円)の「節約」になる。コストがかからないどころか、節約できるのだ。やればやるほど得をする。世界の食品ロスを半減できれば、年間24.7億トンの二酸化炭素換算排出を回避できると試算されている。

ただし、同団体は注意も促している。食品ロスが減れば食料の価格が下がり、その結果として食料消費が増え、排出が戻ってしまう「リバウンド効果」により、削減効果の53〜71%が相殺され得るという研究がある。

だからこそ、3R(スリーアール)の優先順位が重要になる。捨てたものをリサイクル(再生利用)するより、リユース(再使用)する。リユースするより、そもそも捨てない。捨てないことより、作りすぎない、売りすぎない、買いすぎない。発生抑制(リデュース)が最上位に置かれるのは、このためである。

3Rの優先順位をもとに株式会社office 3.11制作

■猛暑は食品ロスを増やしている

食品ロスが気候変動や猛暑の一因になるだけではない。猛暑もまた、食品ロスを増やしている。

たとえば、令和の米騒動の一因とされるのが、コメの「白未熟粒(しろみじゅくりゅう)」の多発である。穂が出た後に高温が続くと、米粒が白く濁る白未熟粒が発生し、歩留りや等級が下がって、価格も下がってしまう。

農研機構によれば、日本で最も多く栽培される品種である「コシヒカリ」の場合、穂が出てから20日間の日平均気温が27℃以上になると、白未熟粒が増える。高温に乾燥が重なると、米粒に亀裂が入る「胴割れ米」も発生し、精米の段階で砕けてしまう。

コメだけでなく、野菜や果物でも高温障害が発生する。たとえば野菜では、生育不良や肥大不足、開花時期のずれ、カメムシなど病害虫の多発。果実ではリンゴの着色不良やミカンの浮皮(果肉と果皮が分離する現象)、ブドウの軟化や腐敗などが農林水産省に報告されている。

これらは見た目の問題であり、白く濁った米粒も、色づきの悪いリンゴも、食べることができる。だが日本では等級が下げられ、規格からはずされ、行き場を失う。

猛暑が食品ロスを増やし、増えた食品ロスが気候変動を加速する。そしてその気候変動が、また猛暑をもたらす。

■私たちにできることとは

私たちにできることは何だろうか。

国連広報センターが、気候変動に対し、個人でできる10の行動を挙げており、その中に「廃棄食品を減らす」という項目がある。

買い物の前に冷蔵庫や食品庫を確認する。買い物に行く前に買い物リストをつくる。すぐ食べるものは手前から取る(てまえどり)。食べきれる量だけ買う。冷蔵庫に入れる量は全体の7割以内におさめる。備蓄は、使った分だけ買い足すローリングストック法で。

当たり前すぎて地味だが、食品ロスの発生抑制は、この積み重ねしかない。

もし、猛暑のために見た目が規格から外れてしまった野菜や果物を買う機会があれば、積極的に選ぶことで、食品ロスを減らすことができる。だが、品質に厳しい日本では、そもそも流通させるのが難しいかもしれない。猛暑によって見た目が崩れることが前提になるのなら、規格のほうを気候に合わせて見直していく必要がある。

報じる立場にある人へ。猛暑を伝えるとき、熱中症への注意喚起とあわせて、「なぜ暑いのか」「何が原因なのか」をひとこと添えてほしい。それだけでも意識が変わり、行動へと結びつく。

暑さを伝える記事は、この夏も3000件以上書かれた。そのうち、暑さの原因に触れたのは58件である。この差が縮まるかどうかは、報じる側の姿勢にかかっている。

※この記事は、執筆者が「Yahoo!ニュースエキスパート」に掲載した記事2026年8月26日)をオルタナ編集部にて一部編集したものです。執筆者による過去の「Yahoo!ニュースエキスパート」記事はこちらから、執筆者のニュースレター「パル通信」はこちらからメールアドレスをご登録いただくことで無料でお読みいただけます。

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井出 留美(オルタナ客員論説委員)

ジャーナリスト。奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力。著書『私たちは何を捨てているのか』『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』『SDGs時代の食べ方』『食べ物が足りない!』他。食品ロスを全国的に注目されたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞など受賞。

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キーワード: #気候変動#食品ロス

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