■雑誌オルタナ86号:日本農業 常識と非常識の間(64)
6月27日の日本農業新聞にこんな記事が載った。「有機転換支援見直しを財務省、米の収量減問題視」というものだ。
少し記事を引用すると、「財務省は(6月)26日、国の事業に無駄がないか点検をする予算執行調査の結果をまとめた。有機農業への転換を後押しする農水省の事業について、慣行よりも収量が減ることを問題視。収量が大きく下がる品目として水稲を具体的に挙げつつ、取り組みをどの程度まで広げていくべきか、見直しが必要とした」。
つまり有機農業は収量が上がらず非効率なので予算を減らす、あるいは予算の見直しが必要ということらしい。まさに効率が悪い、収益力がないという従来の価値観の上に完全に乗っている。2022年施行のみどりの食料システム法によって有機農業に舵を切り始めた農業政策の意味を、少なくとも財務省は全く理解していない。
ぼくが有機農業の普及とそのマーケットづくりに取り組み始めてから半世紀が経った。全国で2000名以上の生産者とお付き合いをする中、金沢のコメ生産者から言われたことが、ぼくの有機農業に対する考え方の基本になっている。
彼は一反歩(約300坪)当たり7俵ほどの収量と言っていた。当時、慣行栽培の生産者が一般的に目指していた収量は一反歩当たり約10俵だった。ぼくは「有機農業だと収量が減るのですね」というと、その生産者は「徳江君、減るのではなく、減らしているの」と返してきた。
有機農業市場は拡大続く
つまり、化学肥料に頼らず地域にある有機物を肥料化して生産するとその「適正収量」は7俵程度ということだった。自然循環に従い肥料も投入せず、山に降る雨が森の腐葉土や岩石を通じて作り出し、地下水や湧水によって供給される養分・ミネラルのみで生産する棚田などの水田の収量は5~6俵となる。
それが適正収量であり、大事なことはその収量は年々歳々変わらず維持される。まさに自然循環が織りなす持続可能な農業なのだ。それがアジアモンスーン地帯に広がる水田の最も優れた姿でもある。
今年、食料自給率は前年の38%から37%に下がっている。それどころか、野菜の種子の自給率は10%未満、90%以上は海外に頼っている。化学肥料の3要素といわれる窒素、リン酸、カリに至っては窒素が自給率3%、あとの2つは0%という始末。
農業の大規模化と機械化により、石油エネルギーへの依存度も高まっている日本農業の脆弱さは明白だ。
有機農業の基本は、自然環境への配慮とその自然循環によってもたらされる養分・ミネラルの活用による農業の持続可能性の実現にある。そのためには循環の最初にある山・森の手入れが必要で、その養分が農だけでなく最終的に海を豊かにしているということを、今こそ為政者、官僚が改めて知ることが大切だ。
一方、有機農業の統計の始まった09年から25年までの16 年間で市場規模は約2.13倍の2766億円となった。年平均成長率は、前半の09 年~17年の約4.5%に対し、後半の17年~25年は約5.1%となっている。
つまり後半の市場拡大が加速している。消費者、国民はすでに気が付いているということだ。



