記事のポイント
- WWFは、「生物多様性の豊かさ」が52年間で平均73%低下したと発表した
- 自然を損なう活動への資金は約7.3兆⽶ドルで、保全資金の約33倍に達した
- WWFは、危機の背景にある食料・エネルギー・金融システムの変革を訴えた
世界自然保護基金(WWF)はこのほど、「生きている地球レポート2026」を公表した。報告書によると、生物多様性の豊かさを示す「生きている地球指数」は、1970年から2022年までの52年間で平均73%低下した。一方、2023年には、自然を損なう活動に約7.3兆米ドル(約1150兆円)が投じられたのに対し、自然の保全や回復に充てられた資金は約2200億米ドル(約35兆円)にとどまった。WWFは、危機の背景にある食料、エネルギー、金融のシステム変革を訴えている。(オルタナ編集部・川原莉奈)

報告書によると、「⽣きている地球指数(Living Planet Index:LPI)」は、1970年から2022年までの52年間で平均73%低下した。
ただし、LPIは、モニタリング対象となった個体群の平均的な変化率を⽰した指標で、野生動物全体の個体数が73%減少したことを意味するわけではない。
生態系別では、淡水域が85%減と最も大きく、陸域が69%減、海洋が59%減となった。
個体群の減少を招く主な要因は、生息地の消失と劣化だ。WWFは、その背景にエネルギー・食料・金融の3つのシステムがあると指摘する。化石燃料の利用は気候変動を招き、農業は生息地の喪失や劣化を引き起こす。さらに、金融機関などの投資先の選択も、自然に負荷をかける活動の拡大を左右する。
実際、2023年に自然を損なう活動に向かった資金は約7.3兆米ドルに上った。一方、自然の保全や回復に充てられた資金は約2200億米ドルにとどまり、前者は後者の約33倍だった。
一方、保護活動によって回復した生物もいる。世界の野生トラは、生息国の政府や地域コミュニティなどによる保護活動を背景に、2010年の約3200頭から2025年には約5700頭へと70%以上増加した。クロマグロやアオウミガメなどにも回復例がある。
個々の種の保全は成果を生むが、それだけでは自然全体の減少傾向を止めることは難しい。WWFは、エネルギー・食料・金融のシステム変革を進めるには、長期的な取り組みを続ける意思決定と、社会の幅広い主体が参画する公正な移行が必要だと訴えている。



