ブラジル選挙はなぜ世界の未来に関わるのか: ルラ再選とアマゾンの行方

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記事のポイント


  1. 2026年10月のブラジル選挙で、左派で現職のルラ大統領が再選を果たした
  2. 第4期のルラ政権でも、森林保護政策や気候変動対策が続く見通しだ
  3. 一方、議会では対立政党が最大勢力となり、政権運営は困難が伴いそうだ

世界最大の熱帯雨林アマゾンを抱えるブラジルで左派のルラ大統領が再選を果たし、通算4期目を担うことになりました。森林保護や気候変動対策で多国間協調を進める路線は続く見通しですが、議会では対立する自由党が上下両院で最大勢力となり、政権運営には困難が伴いそうです。(毎日新聞専門記者・八田浩輔)

勝利選説するルラ大統領(中央)=サンパウロで2026年10月25日、Paulo Pinto/Agência Brasil

10月25日に行われた大統領選の決選投票は、ルラ氏と右派のフラビオ・ボルソナロ氏の一騎打ちとなりました。フラビオ氏はジャイル・ボルソナロ前大統領の長男です。父のボルソナロ氏は大統領在任中(2019〜22年)、環境保護当局の機能を弱め、違法伐採の取り締まりを後退させました。21年には、ブラジルのアマゾン地域で年間に失われた森林面積が15年ぶりの高水準となりました。フラビオ氏も基本的には父の路線を踏襲し、人為的な温暖化にも懐疑的な姿勢を示してきました。

伐採されたアマゾンの森林=撮影・井田徹治

23年に発足した第3次ルラ政権は環境保護機関の機能を立て直し、違法伐採の監視を強めました。ブラジル国立宇宙研究所によると、26年7月までの1年間に失われたアマゾンの森林面積は3335平方キロメートルで前年同期比で4割以上減り、1988年に観測が始まって以来、最少となりました。

ブラジルの森林減少の推移(山火事を除く)=世界資源研究所のデータを元にニュースルーム「PLANET-ing」編集部が作成

アマゾンの破壊の主な要因は、牛を飼う牧草地への転換など農畜産業の拡大とされます。ルラ氏は30年までに違法伐採をなくし、合法的な開発による森林の減少と、それに伴う温室効果ガスの排出を森林再生などで補う「森林破壊ゼロ」を掲げてきました。

アマゾンの「健康」は世界の気候を左右します。二酸化炭素(CO2)を吸収し、樹木や土壌に大量の炭素を蓄えます。破壊や劣化が進めば、CO2を吸収する力が弱まるだけでなく、蓄えた炭素が放出され、温暖化をさらに進めます。地球上で知られる野生生物種の約1割が暮らす生き物の宝庫でもあり、その保護はブラジルだけの問題ではありません。

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アマゾンの森林=撮影・井田徹治

木々が放出する水蒸気は雲となり、雨となって森林を潤す。アマゾンではこうした巨大な水循環のシステムが働いています。伐採や温暖化でこの循環が弱まると、森林が失われたまま元に戻りにくくなる「転換点(ティッピングポイント)」を超える恐れがあります。

ブラジルの気候科学者、カルロス・ノブレ氏は決選投票の直前、筆者も参加した外国メディア向けの記者会見で、アマゾン南東部の森林がすでにCO2を吸収する側から排出する側に変わったと指摘しました。選挙結果を受け、「次の4年間が、世界最大の熱帯雨林の将来を左右する」と対策の強化を訴えています。

地元メディアによれば、ルラ政権は議会で多数派を構成するために、中道勢力の協力を取り付ける必要があります。議会との調整次第では、環境政策でも譲歩を迫られる可能性があります。

一方、周辺国の政治の変化もブラジルの気候外交に影響しそうです。

例えばコロンビアは南米有数の資源国でありながら、左派のペトロ前政権は温暖化交渉などの舞台で「脱化石燃料」の旗振り役となってきました。新たな石油・ガス探査契約を認めず、今年4月には化石燃料からの移行をテーマとする初の国際会議をオランダと共催しました。しかし、6月の大統領選で政権交代が起き、右派のデラエスプリエジャ大統領は、石油・ガス開発の再拡大を打ち出しています。

アルゼンチンのミレイ政権は、パリ協定から離脱したトランプ大統領の「盟友」で、気候変動をめぐる国際協調から距離を置いてきました。アマゾンを抱えるペルーやエクアドルも親米右派が政権を握っています。

ルラ氏は、グローバルサウスと呼ばれる新興・途上国の声を気候交渉に反映させる指導役を目指してきました。11月にはトルコで開かれる国連気候変動枠組み条約第31回締約国会議(COP31)に出席する予定です。ブラジルは会合に合わせ、世界の化石燃料からの移行を進めるロードマップ(行程表)の案を示すとみられています。

ロードマップは昨年、自国で開催したCOP30でルラ氏が提唱しました。島しょ国や欧州各国などに支持が広がった一方、産油国サウジアラビアをはじめ化石燃料への依存度が高い国々は反発し、最終的な合意文書に盛り込むことは見送られました。ブラジルの呼びかけにどれほどの国が支持を寄せるかが注目されます。ただ、森林保護で成果を上げたルラ氏も、アマゾン河口沖での石油探査を支持したとして国内外の環境団体から非難を集めてきました。国内政策と国際社会への呼びかけの整合性も問われることになるでしょう。
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「気候政治フロントライン」は、激動の国際政治を気候変動問題の文脈で読み解くニュース解説です。

※この記事は、地球環境問題の解決を目指す独立したジャーナリズムと同じ目的を持つ多様な主体が協力して作り上げるプラットフォーム・ニュースルーム「PLANET-ing(プラネティング)」が配信した記事「ブラジルの選挙は、なぜ世界の未来に関わるのか: ルラ氏再選とアマゾンのゆくえ【気候政治フロントライン①】」(2026年10月28日発行)を、オルタナ編集部にて一部編集したものです。

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キーワード: #ブラジル選挙

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