■オルタナ86号(2026年9月発売号)特集「アウトサイド・イン」掲載
記事のポイント
- 東海理化は、車のキー技術を使って、飲酒運転の撲滅に挑む
- 運転手からアルコールが検知されると、エンジンの始動自体を制限
- アルコールチェックが義務化された事業者向けが好調で、個人向けも視野に入れる
自動車部品メーカーの東海理化は、車のキーのセキュリティ技術を使って、飲酒運転の撲滅に挑む。運転手からアルコールを検知すると、物理的に車両のエンジンが始動しない「アルコール・インターロック機能」を提供する。道路交通法改正でアルコールチェックが義務化された事業者向けに提供を開始したが、将来的には個人向けも視野に入れる。「人が手掛けないことこそやる」という創業精神を体現した形だ。(オルタナ輪番編集長=北村佳代子)

■「車両盗難とのいたちごっこ」の歴史が技術を磨く
創立78年の自動車部品メーカー・東海理化は、70年以上かけて車のキー技術を進化させてきた。初期のプレスキーから始まり、リモートキー、スイッチを押すだけでエンジン始動するスマートキーシステムのほか、2010年代半ばからはスマートフォンを鍵にするデジタルキーの開発を進めてきた。
同社ニュービジネスセンター次世代ソリューション開発室の長谷部哲也室長はオルタナの取材に対し、「車のキー技術は、車両盗難とのいたちごっこの歴史だ。耐盗難性を高める過程で、キーのセキュリティ技術や暗号通信の技術を磨いてきた」と振り返る。
同社は長年、国内外のカーメーカー向けにスイッチや鍵などの自動車部品を開発・生産・販売してきた。自動車業界全体が「CASE」と呼ばれる百年に一度の大変革時代を迎える中、「世の中に必要なことであれば、人が手掛けないことこそやる」という創業の精神に立ち返り、2019年頃から新規事業開発を積極化させた。
新事業のアイデアを形にするために2022年にニュービジネスセンターを発足し、2022年4月からは社用車を持つ事業者向けに、社用車の予約・稼働の最適化、スマートフォンを使ったデジタルキーの管理、運行記録・アルコールチェック記録までを一元管理できる車両管理システムの提供を開始した。利用者は、自動車に後付けで制御装置を搭載できる。
サービス名称は「Bqey(ビーキー)」。法人やビジネスを意味する「B」に、カギを意味する「キー」を、敢えて「qey」と綴った。「q」には、既存のカギを超えた新しいカギの形を追求したいとの思いを込めた。

(写真提供:東海理化)
■アルコールが検知されればエンジンはかからない
「Bqey」の開発背景には、道路交通法施行規則の改正がある。自家用自動車を5台以上使用もしくは定員11人以上の自家用自動車を1台以上使用する事業者に対し、ドライバーのアルコールチェックを段階的に義務付け、2023年12月以降はアルコール検知器を用いた確認を義務化した。その記録も1年間保管しなければならない。
こうした動きがある中で、東海理化は、アルコール検知器を使って記録を残すだけでなく、デジタルキーの仕組みを使って、アルコールチェックをクリアしないと車のドアが開かない仕組みを提供し始めた。しかし、必ずドアを開ける乗車前にアルコールチェックを実施していなければならない、など利用者の利便性を考慮すると改善の余地があった。
そこで技術開発を通じて生まれたのが「アルコール・インターロック」機能だ。ドライバーは乗車前・乗車後にかかわらずエンジン始動前にアルコールチェックを実施する。ドライバーの呼気から基準値を超えるアルコールが検知されると、車両の起動が制御され、エンジンがかからなくなる。これにより物理的に飲酒運転を防止可能だ。
東海理化は、アルコール・インターロック機能を2025年から「Bqey」を通じて事業者向けに提供を始めた。法人顧客からは、「絶対に社員に飲酒運転をさせない。加害者・被害者を生まない。という企業姿勢を社内外にアピールできるようになった」と評判だ。
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