■雑誌オルタナ86号:欧州CSR最前線(86)
EUで2026年8月12日、「包装・包装廃棄物規則(PPWR:Packaging and Packaging Waste Regulation)」の原則適用が始まった。2025年2月に発効したPPWRは、従来の「包装・包装廃棄物指令」に代わり、EU域内で流通する包装について、設計、使用、再利用、回収、リサイクルまで、ライフサイクル全体を規定する新たなルールである。
背景には、増え続ける包装廃棄物への危機感がある。欧州委員会によれば、何も対策を講じなければ、EUの包装廃棄物は2030年までに19%増加し、プラスチック包装廃棄物は最大46%増加すると予測されていた。
PPWRで特に注目すべきは、単に「リサイクルを増やす」規制ではない点である。EUは人口一人当たりの包装廃棄物を2018年比で、2030年までに5%、2035年までに10%、2040年までに15%削減する目標を掲げる。つまり、プラスチックを紙に変更したり、使用済み容器をリサイクルしたりするだけでは十分ではない。
今回の適用開始に伴い、食品と接触する包装については、一定の基準値を超えるPFAS(有機フッ素化合物)を含むものをEU市場に投入することも禁止された。環境中で極めて分解されにくいPFASへの対応を含め、企業には包装の素材や設計そのものを見直すことが求められる。
そして2030年からは、さらに大きな変化が始まる。包装内部の過剰な空間への制限、一部の使い捨てプラスチック包装の規制、リユース目標、新しいプラスチック包装への再生プラスチック使用義務などが段階的に適用され、すべての包装をリサイクル可能なものとすることも求められる。
日本では、環境配慮型包装というと、紙素材への切り替え、再生プラスチックの利用、分別回収やリサイクル率向上などが注目されやすい。しかしサーキュラーエコノミーでは、リサイクルの前に資源使用そのものを減らし、可能なものは繰り返し使うことが重要だ。PPWRはリサイクルだけでなく、リデュース(削減)、リユース(再使用)をより強く企業活動に組み込む制度ともいえる。
EU市場に製品を展開する企業はもちろん、食品・飲料、化粧品、日用品、アパレル、EC、包装材メーカーなど幅広い企業に関係する。素材変更だけで終わらせず、不要な包装の削減、リユース容器やリフィルの導入など、商品やサービスの提供方法そのものを見直す視点が求められる。
ただ、PPWRへの対応を、単なる「EU規制への対応コスト」と捉えるべきではない。包装を減らすことは、原材料使用量や廃棄物だけでなく、輸送重量、物流効率、調達コストを見直す機会にもなる。これから企業に問われるのは、「リサイクルできるか」だけではない。「そもそも使わなくて済む包装はないか」である。EUで始まった転換を機に、日本企業も製品やサービスを見直し、サーキュラーエコノミーをビジネスとして実行する必要がある。



