オルタナ78号(2024年10月発売)の全コンテンツは次の通りです。
■編集長コラム「alternative eyes」:中央集権型エネルギーの呪縛
オルタナ本誌78号をお届けします。今号の第一特集は「日本のGXはガラパゴス」です。日本政府は水素やアンモニアを軸とした「GX」を推進しています。世界的な脱炭素の流れと逆行し、ガラパゴス化する日本のGX政策をまとめました。
■高橋さとみの切り絵ワールド―人生はまわる
回りながら暮らしてゆく
めぐりながら繋いでゆく
自転している地球の上で
■第一特集: 日本のGXはガラパゴス
日本のGX(グリーントランスフォーメーション)政策が、世界の「脱炭素」潮流と大きく乖離(かいり)してきたことが際立ってきた。その極致は、「ゼロエミッション火力」だ。石炭火力発電の継続利用を前提とし、アンモニア混焼・専焼を推進する。海外のNGOからも批判が高まるが、日本政府はどこ吹く風だ。なぜ日本のGXはこれほど「ガラパゴス」なのか。
GXガラパゴス、5つのポイント
平田仁子・一般社団法人クライメート・インテグレート代表理事
GX政策はどこがガラパゴスなのか。気候政策シンクタンクの一般社団法人クライメート・インテグレートの平田仁子・代表理事が、GXの5つの論点を語った。パリ協定の「1.5℃目標との整合性」や「ゼロエミッション火力の削減効果」などだ。
化石燃料の延命、アジア各国で狙う
日本政府は「アジア・ゼロエミッション(AZEC)共同体」構想を掲げ、日本国内のみならず、アジア各国でも火力発電のアンモニア・水素混焼を推進する方針だ。8月にはインドネシア・ジャカルタに新たな拠点を構えた。これに対し、現地の環境NGOなどは「化石燃料の延命措置に過ぎない」と批判を強める。
日本の炭素賦課金、炭素税に程遠い
小林光・オルタナ客員論説委員/元環境事務次官
日本政府が進める「成長志向型カーボンプライシング構想」の一環で、2026年度から排出量取引、2028年度から炭素賦課金などを導入する予定だ。だが、その実効性は不十分との見方もある。1990年代から炭素税導入に取り組んできた元環境事務次官の小林光氏に寄稿してもらった。
原発への回帰は脱炭素を遅らせる
大島堅一・龍谷大学政策学部教授
政府はGXにおいて原子力発電を「脱炭素電源」と位置付け、再稼働・新増設・新型炉の開発を進めようとしている。しかし、最近の研究では「原発を推進してもGHGは減らない」ことが明らかになった。原発回帰は脱炭素に貢献せず、かえって気候変動対策を停滞させると言わざるを得ない。
■トップインタビュー: パーパスの推進に役職は要らない
不動奈緒美・ボルボ・カー・ジャパン社長
ボルボ・カー・ジャパンの不動奈緒美社長は、「パーパスドリブンな組織には、役職は要らない」と言い切った。2023年8月に社長に就任すると、真っ先に行った施策が「役職の廃止」だ。生命保険会社出身の新社長は、業界の「常識」にとらわれない。
■トップインタビュー: SDGsへの貢献、パーパスで実現へ
上田健次・ユニ・チャーム上席執行役員 ESG本部長
ユニ・チャームは、同社のパーパス(存在意義)を「SDGsの達成に貢献する」とし、事業活動を通して持続可能な社会を追求する。企業が、国際目標であるSDGsそのものをパーパスに揚げるのは珍しい。その狙いを聞いた。
■トップインタビュー: α世代の価値観で社内を変えたい
松江朝子・I-ne(アイエヌイー)執行役員 CSuO
ヘアケアブランド「ボタニスト」などを手掛けるアイエヌイーは2020年に上場してから4期連続で増収増益を続ける。急成長中の同社がサステナビリティを推進する理由は、健全な危機感を持つためだ。Z世代より若いα(アルファ)世代の声を聴くことが効果的だと言う。
■世界のソーシャルビジネス
ウクライナ発の新興企業、リリーフ・ペーパー社は、木を伐採することなく、都市が回収した落ち葉を原料に紙を作る。同社の紙製品は、すでにロレアル、LVMHなどの大手企業も採用し、欧州で順調に顧客層を拡大している。
ベトナムでは人口の約14%を少数民族が占めるが、貧困や教育などさまざまな課題に直面している。そうしたなか、黒モン族のスー・タンさんは、ベトナム北部の山岳地帯サパで、社会貢献を目的にした旅行会社を立ち上げた。少数民族のホームステイやトレッキングサービスを提供する。
米ニューヨークで生まれた、子ども服のアップサイクルプラットフォームが話題だ。創業者は、子どもの成長に伴い各家庭が大量の子ども服を廃棄している点に着目した。「親の視点」を社会課題の解決に生かした。
■第二特集: 2030年には原発稼働不可能に
岸田首相は8月の「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」で、「残された任期の間に東日本における原子力発電の再稼働に筋道をつける」と前のめりの姿勢を見せた。しかし、その裏には2030年ころには原発稼働ができなくなるという深刻な問題が見え隠れしている。
■第三特集: ハリス対トランプ、気候政策の違い
11月の米国大統領選で民主党候補のカマラ・ハリス副大統領と共和党候補のドナルド・トランプ前大統領は、気候変動に関して対極の公約を展開している。どちらが勝利するかは我々の生活にも大きな影響がある。2人の大統領候補の気候政策の違いを見る。
■第四特集: AI運用の課題、環境と人権に
米グーグルと米マイクロソフトは、年間の温室効果ガス(GHG)排出量が4-5割増加したことを相次いで公表し、AI(人工知能)運用に伴う環境負荷の高さが露呈した。アルゴリズムがもたらす差別など、人権面での課題も多い。AIは持続可能な社会の実現に寄与するのだろうか。
■第五特集: 英国250年ぶり、石炭に「終止符」
英国は2024年9月末、同国最後の石炭火力発電所を閉鎖する。1776年にジェームス・ワットが蒸気機関を実用化し、後の産業革命へと導いてから250年余り。産業革命の先駆けが自ら石炭に終止符を打つことで、世界のエネルギー政策に大きな影響を与えよう。
■サステナブル★セレクション2024
「サステナブル★セレクション」とは、サステナブルな理念と手法で開発された製品/サービスを選定して、オルタナが推薦する仕組みです。一つ星は製品/サービスの持続可能性を審査し、二つ星はこれに加えて組織のサステナビリティを審査します。2024年の一つ星は43点、その内二つ星は13点を選定しました。三つ星は、2024年10月に発表いたします。今年2回目の一つ星公募は11月〜12月中旬を予定しています。
■オルタナティブの風(田坂広志) 「民主主義の自殺」と人類の未来
「賢明な国民がいない国に、賢明な国家リーダーは生まれてこない」。「ポピュリズム」(衆愚政治)が生まれる真の原因は、大衆迎合的な政策を振り撒く政治家ではなく、それを安易に受け入れる私たちの側にあるのかもしれません。
■エゴからエコへ(田口ランディ) AI時代に必要な「手のぬくもり」
コロナ禍は過ぎても、あまりの暑さに体調不良に悩む人が増えています。このほど、「ハンドマッサージ講座」を受講してみました。リラックスできるとともに、絆を深め合う効果も。CSRの一環にもいいかもしれません。
■ESG情報開示最前線(ESG情報開示研究会)
第一三共では、トップの想いや人柄が伝わるように、報告書全体で価値創造ストーリーをつくっています。重視するのは、「一貫性のあるストーリー」です。
社員にも「課題」を語らせよ
24年度版の統合報告書では、最重要資本である「人」に焦点を当て、「社員」の登場回数を増やしました。社員が持つ「課題」がどのようなものか、生の声で伝達することを狙いました。
■真のサステナビリティ投資とは(澤上篤人) 預貯金の3%を経済の現場に
日本には1012兆円という大量の個人マネーが預貯金に眠っています。その一部を動かすだけでも、日本経済はいくらでも活力を取り戻せます。
■モビリティトピックス(島下泰久)
スズキ、100キロ軽量目指す/ホンダと日産、協業の行方は/国内メーカーは「2陣営」に再編へ/BYD、BEV市場の旋風に
■モビリティの未来(清水和夫) 自動運転、米中に遅れるな
米サンフランシスコをはじめ、中国の北京や上海でロボットタクシーが走り始めています。自動運転の「現在地」をレポートします。
■農業トピックス(オルタナ編集部)
農産物の環境負荷を「見える化」/デンマーク、畜産に炭素税導入へ/アマゾン破壊に補償5千万ドル/生協と日芸「食料自給」を学ぶ
■日本農業 「常識」と「非常識」の間(徳江倫明) 70年前はすべて有機だった
ドキュメンタリー映画「食べることは生きること――アリス・ウォータースのおいしい革命」をぜひ見てください。私たちは再び有機農業に戻ることができるはずです。
■林業トピックス(オルタナ編集部)
住林などが米で7階建て木造ビル/セブンが店舗の木材活用進める/森林・林業白書、花粉と森林に焦点/コーヒー豆の森林破壊ゼロへ
■「森を守れ」が森を殺す(田中淳夫) 森林が温暖化ガスの発生源に
夏の高温と日射が強すぎると、スギが光合成できなくなる恐れがあります。一方でCO₂排出は増える可能性があり、森林が温暖化ガスの発生源になりかねません。
■漁業トピックス(オルタナ編集部)
クロマグロ資源量回復10倍に/スシロー、磯焼けウニを活用へ/サンゴの73%がすでに死滅/「海のエコラベル」認知度22%
■人と魚の明日のために(井田徹治) ハイチのウナギ、日本の食卓へ
アメリカウナギの稚魚(シラスウナギ)の輸入量が急増しています。ハイチでは密猟が横行しており、日本人の大量消費は、ウナギの絶滅につながりかねません。
■フェアトレードトピックス(潮崎真惟子)
人気スパイス、4割を「認証」に/金融機関の「人権DD」を問え/奴隷状態の労働者、イタリア農村で
■フェアトレードシフト(潮崎真惟子) 社内の推進体制、初の格付け
フェアトレード・ジャパンは、新たな企業登録制度として「フェアトレード・ワークプレイス」を開始しました。社員のサステナビリティ意識の向上にもつながるものです。
■ファンドレイジングトピックス(宮下真美)
千人超で資金調達の潮流探る/能登半島支援、代理寄付じわり/「Bコープ認証」、世界で8千社超に/資金調達者が描くキャリアは
■社会イノベーションとお金の新しい関係(鵜尾雅隆) 子どもの未来をどうつくるか
若者たちが、続々と新たな教育サービスを立ち上げています。日本ファンドレイジング協会も、カードゲーム「フロムミー」を用いて、SDGsと寄付教育を教育現場に浸透させていきます。
■廃棄物・静脈物流トピックス(エコスタッフ・ジャパン)
タイヤ電池搭載の街路灯を実証/砂問題を解決するテトラポッド/太陽光パネルのリユース目指す/官民連携で廃棄おむつの循環へ
■論考・サーキュラーエコノミー(細田衛士) 静脈市場は「鶏が先か卵が先か」
6月末に経済産業省が発表した「循環経済の実現に向けた中間とりまとめ(案)」が物議を醸しています。事業者に再生プラスチックの利用計画の策定を義務付けるというものです。
■欧州CSR最前線(下田屋毅) 自国の食文化を見つめ直す
デンマークのロラン島で開催された「食の国民会議」に参加しました。デンマークの国民が、自分たちの食について話し合って決めていく会議です。当地のようすをレポートします。
■CSRトピックス(CSR48)
ヤクルト、メルカリでリユース/生成AIをカスハラ対策に/開示のESGから戦略のESGへ/ファミマがパラアートのハンカチ/インクルーシブへの学びを深める/ラポールヘア、タイで女性支援へ/[総監督のつぶやき](CSR48・太田康子)「虎に翼」から80年を経て
■「こころざし」の譜(希代準郎) アマゾンの七夕
アマゾン奥地にヘリコプターでたどり着いた。安くはなかったが、体が動けるうちに、かつてゴールドラッシュに沸いた露天掘りの金鉱山セーハペラーダにどうしても行かなくてはならない理由があった。